ヤクルト原樹理投手(23)の目には、楽天岸が映っていた。イニング間のキャッチボール中でさえ、視線をマウンドに送った。力の入れどころ、上半身と下半身のバランス、力感。今年の自主トレで教わったことを再度、確認するように先輩の投球を見つめた。「見ていて本当に勉強になる」。師匠との投げ合いでは、少し成長した姿を届けた。

 進化したポイントは、投手としての原点・直球。昨年までは、武器であるシュートに頼り過ぎていた。その「直球が浮いていた」と話す2回。結果は3者凡退に仕留めたが、課題を感じていた。新人だった昨年であれば、イニングが変わっても高さの修正に苦しんだ。今年は違う。3回以降は徹底して低めに集めた。カウントを稼ぐだけでなく、決め球としても有効。5回に連打で失点こそしたが、無死一、三塁から細川を空振り三振に仕留めた外角144キロは理想的だった。真中監督も「原点の直球に課題を持って出来ている」と目を細めた。

 質の高い直球を投げるため、投球フォームの改良に踏み切った。今まではテークバックが浅く、腕が遅く出てくることで体が前に突っ込むことがあった。癖の修正方法を楽天岸との自主トレで学んだ。「肩甲骨付近へ意識を持って、体の割れを作る」。イニング間のキャッチボールで再確認した。

 ルーキーイヤーの昨季は開幕ローテ入りを果たしながら、故障などで13試合登板(2勝8敗)に終わった。岸イズムを吸収した今年の原樹理はひと味違う。【栗田尚樹】