西武の抑え候補、増田達至投手(28)が貫禄の投球をみせた。楽天とのオープン戦にクローザーとして登板。1イニングを無安打、奪三振2の無失点で締めた。カットボールで押しまくる“和製リベラ”は、侍ジャパンの予備登録メンバーにも名を連ねるが、キャンプから一貫してプロ野球開幕のみを目指して調整。在野の侍は、WBC終了後のパ・リーグを盛り上げ、野球人気拡大に一役買う。

 西武、楽天ともに2ケタ安打の打ち合いを、守護神が締めた。増田は最終回のマウンドに上がると、最速146キロのカットボールで、中川、枡田を連続三振。聖沢も右飛に打ち取った。両軍通じてこの試合初の3者凡退。「開幕へ向け、例年になくいい感じで来ていますね」とほほ笑んだ。

 聖沢に右翼ポール際に大ファウルを打たれる場面もあったが、辻監督はそれすら「打たせにいったファウル。本当に安定、安心ですよ」と好材料ととらえた。そんな実力者は、侍ジャパンの予備登録メンバーにも選ばれていた。「本当に光栄」と言うが、実は今に至るまでWBC公式球に1度も触ったことがない。

 追加招集を考えれば、滑りやすいボールに慣れておくことも必要だが「少し慣れた程度でいい投球ができるほど、甘い舞台じゃないはず」と言う。世界の舞台で、日の丸を背負ってマウンドに立つことを思い浮かべれば、ときめかないはずはない。それでも「とにかくチームのことだけ」とWBC公式球を視界に入れることすらしなかった。

 「日本の野球界にとっては、WBCの後も大事」と真剣に言う。世界の舞台での戦いは、日本のスポーツファンの耳目を野球に引きつける好機。大会後にプロ野球の公式戦で、選手たちが好プレーをみせれば、そのまま野球ファンとして定着してくれるはずだ。

 そう考えるからこそ、増田はWBCへの未練を断ち切り、パ・リーグ開幕だけを見据えて準備してきた。「米国に行ったメンバーには疲労もあると思う。僕らが頑張る番です」。在野でも侍。シーズンを見据え、刀を研ぐ。【塩畑大輔】