これぞ主将の働きだった。巨人坂本勇人内野手(28)は5回1死一塁、中日大野の直球を軸回転で思い切り振り抜いた。打球が右中間席の前列に飛び込むと、右太ももをたたいて「よし!」と絶叫。開幕戦の本塁打は14年以来2本目で「入ってくれて良かった。いい打ち方ができたと思います」と自画自賛した。

 打つだけでは終わらない。守備では4回無死一塁で、二塁ベース付近に飛球を打ち上げた打者ビシエドが走っていないのを確認。わざと捕球せずにバウンドさせ、すぐに拾い上げて二塁に入った中井にトスして併殺を完成させる頭脳プレーを見せた。7回には三盗に成功しガッツポーズ。「走攻守すべてでいいプレーを見せたいと思って普段からやっている。いいところが見せられてホッとしています」と笑顔で振り返った。

 WBCの経験が生きている。侍ジャパンは準決勝で米国に敗退したが、正遊撃手として打率4割1分7厘の活躍を見せた。25日にチームに合流。時差ぼけの影響で夕方になると少し眠気に襲われると言うが、表情は明るい。「WBCからずっといいモチベーションでやれている。だからすんなり試合に入れた」。激戦で抱き続けた「負けたくない」との強い思いを開幕戦に持ち込めていた。

 高橋監督からは「周りが見えている。余裕がある」と称賛されたが、「11年目だから余裕がないと困ります」と照れ笑い。主将3年目だが、まだ優勝はない。試合前のミーティングでは「監督を胴上げできるようにやっていきましょう」と呼びかけ、前主将の阿部とマイコラスと立ったお立ち台でも「監督を男にしたいという気持ちで1年間、戦っていきたい」と宣言した。V奪還の日まで、先頭でチームを引っ張る。【浜本卓也】

 ▼3番坂本勇は14年以来2本目の開幕戦アーチで、坂本勇と阿部のアベック本塁打は通算30度目。巨人の3、4番が開幕戦でアベック本塁打は68年王-長嶋、72年王-長嶋、94年松井-落合、09年小笠原-ラミレスに次いで5度目。開幕戦で3、4番のアベック本塁打が出た時の巨人は過去4度すべて優勝しているが、今年はどうか。