前夜、オリックスに完敗し、この日負ければゲーム差なしで並ばれる。先制点の持つ意味は大きかった。梨田監督は「銀次は昨秋から走塁にも積極的になってきた。それまでは打つ方の比重が高かったけど」と評価。銀次も「いい走塁ができた」と満足そうに振り返った。

 2点目も銀次だ。6回1死二塁。昨季12打数1安打と苦手にしていたオリックス先発松葉の内角球を逆方向の左中間へ運ぶ。「試合の流れが止まっていたので、ここで1点取れば、またこちらに流れが来ると思っていた。わざと詰まらせて、誰でもホームにかえれるようなところに打ちました」。二塁走者(ウィーラー)の足の速さまで考えた、芸術的な打撃だった。

 朝、目覚めた時から「今日は絶対に勝つ」と誓っていた。楽天の東北復興支援活動「TOHOKU SMILE」の冠を抱いた年1回のゲーム。津波被害を受けた岩手・陸前高田、宮城・南三陸町などから、被災地の子供たちが招待されていた。「そこは意識していました。何が何でも勝つと」。岩手・普代村出身。東北を勇気づけるために、常に先頭に立つ気構えを持ち続けている。

 投打がかみあい、迫ってきたオリックスをまずは退けた。「今年(の楽天)は違うぞ、ということを見せつけた試合。これからもっともっと笑顔を届けます」。東北のヒーローであり、選手会長でもある銀次は、そう言い切った。【沢田啓太郎】