楽天の「ドクターK」が、偉業を達成した。則本昂大投手(26)が、盛岡で行われた日本ハム戦で、5戦連続2桁奪三振を記録した。パ・リーグでは野茂(近鉄)、杉内(ソフトバンク)、ダルビッシュ(日本ハム)に次ぐ史上4人目の快挙。7回5失点ながら、4連勝でリーグトップに並ぶ5勝目を挙げた。

 則本に笑顔はなかった。1点リードの6回1死走者なし、2ストライクからの4球目だった。内角へ投じた141キロのボールは、大田のバットをかわすように急激に落下した。シーズン途中に習得したスプリットで、10個目の三振をマークした。5試合連続となる2桁奪三振の偉業を成し遂げたが、表情は変わることがなかった。1試合12個の三振を奪う投球ながら、「三振が直接勝ちにつながるわけではない」と満足することはなかった。

 最悪な立ち上がりだった。初回に中田、大田に本塁打を浴び、5点を失った。2回以降は無失点に抑えたが、7回5失点と不本意な結果だった。三振は取ったが、内容に納得できなかった。「三振を取れるに越したことはないけど…。それ以上にチームの勝利を考えている。今日は本当に野手の人に感謝したい」と厳しい表情で試合を振り返った。

 盛岡は因縁の場所だった。昨年5月18日のオリックス戦で自己ワーストの10失点で4回KOされた。岩手県営球場は、Koboパーク宮城に比べてマウンドが軟らかい。対策を講じるため、仙台で行った登板2日前のブルペン調整は、本球場より軟らかい室内練習場で44球を投げた。「何とかしたかった」。毎年試合を行う東北のマウンドを苦手にしたくなかった。

 4月19日西武戦から始まった5試合連続での2桁奪三振は、そのいずれも負けていない。この試合で4連勝となり、今季5勝目を飾った。そこに求めるものがある。

 則本 勝利を左右する三振は意味がある。ただ、三振をたくさんすればいいとは思っていない。試合の流れを左右する、局面の三振が理想。チームが勝たないと何も意味がない。自分が抑えて、チームが勝たないといけない。

 次回登板で野茂(近鉄)の6戦連続の2桁奪三振の期待がかかるが、「そこまで、考えていない」と淡々としていた。エースとして背負うものは、勝利をもたらすための投球である。【栗田尚樹】