苦しいときに頼れるのは過去の自分だと悟った。前々カード広島3連戦でロッカーで席がとなりになった阿部から言われた。「命を取られるわけじゃない。思い切ってやればいいよ」。先輩からの一言でハッと気付かされた。打席では一貫してベースから離れて立ってきたが、不振の間はベース寄りに立ってみたりもした。試合前は人目を避けてバットを振り込んだ。試行錯誤の繰り返しも結果には結びつかない。行き着いた答えは「思い切り振っていきます」。醸し出す雰囲気に躍動感が戻った。

 主力として一打でチームを動かした。28イニングぶりの得点をスコアボードに刻んだ。負ければ今季初の借金生活が突きつけられる一戦。生え抜きらしく、土壇場で踏ん張った。高橋監督も「本来ならもっと打ってくれないと困る選手。ずっとこの1本をきっかけにしてほしいと思い続けている。そうなってくれれば」と話した。目を見開いた長野が、ひのき舞台で大いに暴れる。【為田聡史】