阪神大和内野手(29)が今オフ、国内フリーエージェント(FA)権を行使する意思を固めていることが17日、分かった。宣言残留の可能性も残すが、すでにオリックス、DeNA、ヤクルトが水面下で調査を続けており、権利を行使すれば大争奪戦となるのは必至な情勢。この日DeNAに敗れ、クライマックスシリーズ(CS)敗退が決まった虎は、全力で球界屈指の名手を慰留することになる。

 終戦の瞬間、大和は厳しい表情のまま、ジッと甲子園のグラウンドを見つめ続けた。日本一への道のりが断たれた悔しさ。2回1死一塁で二ゴロ併殺打に倒れたふがいなさ。そして…。さまざまな感情が入り交じった、そんな表情だった。

 虎に激震が走る。縦じまひと筋12年目の大和が今オフ、国内FA権を行使する意思を固めていることが判明した。今年4月9日に権利を初取得。その際は「まだシーズン中なので、ゆっくり考えます」と話すにとどめていたが、複数の球界関係者によると権利行使の意思は固いとみられる。

 もちろん、阪神残留の可能性も残しており、球団は全力で慰留に務める方針だが、すでに二遊間が固定できていないオリックス、二塁レギュラーが定着していないDeNA、遊撃手の層に不安があるヤクルトなど複数球団が水面下で調査を続けているもよう。今後、申請期間に入ってFA宣言すれば、大争奪戦となることが必至となった。

 スイッチヒッター1年目の今季は開幕当初こそユーティリティープレーヤーの位置づけだったが、次第に左打席でも安打を量産。北條の状態が上がらず、ルーキー糸原も右膝靱帯(じんたい)損傷で離脱した終盤は遊撃スタメンに定着していた。

 今季の推定年俸は5000万円。FA獲得した球団に金銭及び選手の補償が定められている「年俸Bランク」とみられるが、内外野ともに球界屈指の守備力を誇っており、他球団からの注目度は以前から高かった。両打ちにしてシュアな打撃も向上し、今オフは人気を集めそうな気配だ。

 当然、来季13年ぶりのリーグ制覇を目指す金本阪神にとっても、欠かせない存在に違いない。球団は3年前後の複数年契約を提示し、誠意をもって引き留めにかかるとみられる。

 CSファーストステージ敗退が決まったこの日の試合後、大和は言葉を発することなく、表情に悔しさをにじませながらクラブハウスに歩いた。大和の決断、去就に注目が集まる。

 ◆大和(やまと、本名・前田大和=まえだ・やまと)1987年(昭62)11月5日、鹿児島県生まれ。樟南から05年高校生ドラフト4巡目で、内野手として阪神入団。1年目のオフに登録名を変更。12年から3年連続で外野手として100試合以上に出場し、14年に外野のゴールデングラブ賞獲得。今季は二塁で48、遊撃で56試合、外野で5試合に出場。内外野を問わず、卓越した守備力は球界屈指。177センチ、69キロ。右投げ両打ち。

 ◆FA手続き FA資格選手はその年の日本シリーズが終了した日の翌日から土、日、祝日を除く7日間以内に、在籍球団に対してFA権を行使する意思を表明することができる。先の期限後、コミッショナー事務局から「FA宣言選手」として公示。その翌日から、全球団(国内FA資格者の場合は国内のみ)の契約交渉が可能となる。

 ◆阪神在籍中にFA宣言した選手 過去28人がFA権を行使。内訳は他球団への移籍が9人、宣言残留が19人。直近の国内移籍は13年の久保康友で、DeNAへ。近年の野手では12年に平野恵一がオリックス、09年藤本敦士がヤクルトへ移籍している。宣言残留では、鳥谷敬が14年にメジャー移籍を視野に入れて宣言したが、最終的に阪神でのプレーを決断。1億円増となる推定年俸4億円の5年契約でサインした。