広島薮田和樹投手(25)が、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ初戦のDeNA戦で5回2安打無失点の完封勝利を挙げた。試合前から降り続ける雨の中、ぬかるんだマウンドの影響を感じさせず、力強い球でDeNA打線の勢いを止めた。CS初登板で初勝利。今季チーム勝ち頭の好投でチームは白星スタート。アドバンテージを含め2勝として、今日19日、勝って一気に日本シリーズ進出へ王手をかける。
雨にも、重圧にも、DeNAにも、薮田は負けなかった。雨脚が強くなった4回以降も、滑りやすくなった足場をしっかりと踏みしめて投げた。140キロ後半の直球は打者の手元でもスピードが落ちなかった。ファーストステージを勝ち上がったDeNA打線の勢いを、力で止めた。
「雨が降っていた割に、いい投球ができた。まだ日本一まで6勝ある。そのうち1勝でも多く勝ちたい」
味方打線が先制した5回裏終了時に雨脚が強くなり、コールドゲームが成立した。5回64球、2安打無失点。ファイナルステージ初戦の大役を見事に務めた。立ち上がりの1回1死から梶谷を四球で歩かせても「そこまで悪い球ではなかった」と落ち着いていた。「強い球をゾーンに投げる感覚でいけた。直球が良かったので押していけると思った」。球速ではなく、シーズン中から追い求めてきた球威で勝負した。
踏み込んだ左足でブレーキをかけるように投げる右腕は、雨を苦手としていた。4月22日ヤクルト戦(神宮)は中継ぎで7回に登板。雨の中、フォームがばらつき、2連続死四球など制球を乱した。6月24日阪神戦(マツダスタジアム)は降雨ノーゲームとなったが、先発で4回まで6安打1四球3失点。だが、苦手意識は拭い去った。克服するためにフォームを修正。この日は「足を着いて投げることを意識した」。土台が安定しフォームも安定。球威や制球も本来の力が発揮された。
大事な初戦を勝利に導く投球に、緒方監督は賛辞を惜しまなかった。「いろんなプレッシャーがある中でしっかりと自分の投球をしてくれた。ナイスピッチング」。今年チームのピンチを救い、そして勢いづけてきた右腕が、日本一へ最高のスタートをもたらした。【前原淳】