ミスタータイガースに育てる! 阪神金本知憲監督(49)が、ドラフト1位大山悠輔内野手(22)の4番英才教育を本格化させる。今季終戦から2日目の19日、大山はみやざきフェニックス・リーグに合流。今後は全試合で4番起用されることが判明した。指揮官は真の4番になれる男と素材を高く評価。来季の出場機会を増やすため、秋季練習や秋季キャンプでは内外野の複数ポジションを練習させるプランも明かした。

 無念の今季終戦から2日。南国宮崎で、大山を真の4番に育てるスペシャル教育が始まった。この日からみやざきフェニックス・リーグに参加。ロッテ戦は雨天中止となったが、オーダー表に書き込まれた中軸は「3番糸原、4番大山、5番中谷」。山田2軍監督代行は「4番に決まってるやん。上(1軍)で4番打ってるんだから」と残り試合の4番固定を明言した。

 躍動するルーキーの姿に誰もが心を揺さぶられた。今季終盤に頭角を現し、第101代4番も務めて7本塁打。DeNAとのCSファーストステージでも、1発を含む打率5割3分8厘と打ちまくった。他を圧倒するスケール感-。それはベンチから見つめた指揮官も、同じ思いだった。

 金本監督 まあ(4番)候補になってくると思うよ。

 今春のキャンプ1軍、2軍での実地教育を経ての1軍昇格など、施してきた英才教育は成功を収めた。ステージは上がり、今度は真の4番道を歩ませる。これは首脳陣の総意だ。現役時代に4番で沸かせた浜中2軍打撃コーチは「片岡コーチから打順は任せると言われたけど、ずっと4番でいきます!」と断言。さらに守備での育成プランも練られている。遊撃を含めた複数ポジション案だ。

 金本監督 そこはコーチと話し合って、練習はさせると思うよ。ショートもセカンドも、サードも。外野も。どこでも。

 本職は一、三塁だが、今季はシーズン終盤に二塁も守った。三塁鳥谷がまだまだ元気で、一塁にはドラフト1位で狙う清宮か、新外国人が収まる可能性もある。二遊間への挑戦が出場機会を大きく増やすきっかけになることは間違いない。もちろん、大山もやる気だ。

 大山 言われたポジションをしっかりやる。だからと言って1つ1つのポジションをおろそかにすることはない。全力でやります。

 課題は強靱(きょうじん)な肉体を作り上げること。理想は伝説の4番金本級のボディーだ。金本監督は「振る力をつけたら技術ももっと生きる。すごい大器の予感はある」と予言する。現在、体重は約87キロで体脂肪率15、16%。体重を維持しつつ、体脂肪率10%まで落とせば「スーパーのベスト体重」だという。絶えて久しい和製大砲、ミスタータイガース育成へ。ハードな秋が始まる。【桝井聡】

 ◆阪神の4番打者 今季の大山まで、101人が先発4番を務めてきた。最多は藤村富美男1069試合で、現監督の金本知憲921試合が続く。主な生え抜きでは田淵幸一812試合、掛布雅之800試合らが球団史に名を残してきた。年間100試合以上務めた生え抜きとなると、00年新庄剛志107試合にまでさかのぼる。大山は続けるか。

 ▼景浦将 第2代4番打者 227戦出場

 リンゴを握りつぶすと言われた怪力で、球団創設直後に豪打連発。36年秋に最優秀防御率(0.79)の元祖二刀流。

 ▼藤村富美男 第3代4番打者 1069戦出場

 初代ミスタータイガース。4番で1069試合は球団最多。「物干しざお」と呼ばれた長いバットを振り回した。

 ▼田淵幸一 第43代4番打者 812戦出場

 高く舞い上がるアーチの美しさは天下一品。捕手ながら75年に43本塁打でキングに。全盛時の王貞治の好敵手だった。

 ▼掛布雅之 第52代4番打者 800試合出場

 元来は中距離打者も、徹底した猛練習で長打力を獲得。通算349本塁打は現在も球団最多として輝く。

<大山英才教育の歩み>

 ◆キャンプ1軍 沖縄・宜野座の1軍キャンプメンバー入り。金本監督は「内野は全部競争」と同じメニューを課し、鳥谷、北條、キャンベルらと競わせた。

 ◆開幕2軍 1軍オープン戦9試合で3割3分3厘の好成績を残したが、金本監督は3月中旬に2軍降格を指令。より多くの実戦経験を積ませるためだった。

 ◆デビュー 5月14日のウエスタン・リーグのソフトバンク戦で、大隣から左翼へプロ1号2ラン。実戦経験を積み、満を持して6月18日に1軍初昇格した。

 ◆1軍1号 7月1日のヤクルト戦で原樹からプロ初本塁打。プロ初安打が決勝本塁打となった新人選手は、球団初の快挙だった。

 ◆101代4番 9月1日の中日戦で阪神新人では53年ぶり3人目、101代4番で出場。翌日2日の同戦では、4番での初本塁打を放った。

 ◆上げ潮フィニッシュ レギュラーシーズン成績は出場75試合、7本塁打、38打点、打率2割3分7厘。CSでも打率5割3分8厘と好成績を残した。