虎がついに貯金を吐き出してしまった。「日本生命セ・パ交流戦」楽天3回戦(甲子園)は先手を奪いながら、5回に失策が重なって追いつかれた。

1点を追う8回には無死一、三塁と反撃機をつかんだが、高いバウンドの内野ゴロで三走・木浪が本塁に走れず、結局得点できなかった。矢野監督は木浪をベンチで珍しく「公開説教」するシーンも。チームは引き分け挟んで6連敗。交流戦での最長連敗で、交流戦同率最下位となった。

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温厚な矢野監督が鬼になった。2-3と1点を追う8回だ。無死一、三塁とチャンスを作ると、1番近本のたたきつけた打球は三塁前に大きくはずんだ(結果は三ゴロ)。終盤の土壇場に同点…。ところが三塁走者の木浪はスタートを切ることが出来ず。タイミング的には十分セーフに見えたが、本塁突入をちゅうちょした。「いけるやろ…」-。ベンチに座る指揮官の口元は、そうつぶやいたように見えた。

消極的なプレーに矢野監督の怒りは収まらなかった。直後、打者糸原がカウント1-1になったところで、三塁の代走に江越を送り、木浪をベンチに下げる明らかな「懲罰交代」。その後も目の前に呼び寄せると激しく叱責(しっせき)した。テレビに大写しになった「公開説教」は、数十秒間も続き、木浪のつぶらな瞳はみるみる涙目になった。

試合後の矢野監督は努めて冷静に話した。「いつもと同じことになっちゃうけど、これ(ミス)は返ってこないんでね。聖也(木浪)のあれでかえって来られないということを、どうしていくか。そこをしっかり考えていきます」。積極的なプレーを良しとする矢野野球に反するプレー。これだけは許せない。指揮官の表情は怒気を含んでいるようだった。

チームは引き分けを挟んで今季ワーストの6連敗で貯金を吐き出した。5回には先頭ウィーラーのゴロを一塁手原口が捕球できず。続く辰己の飛球を中堅手近本がグラブの土手に当てて落球するという目を疑うようなプレーが続いた。この2連続失策から同点に追いつかれ、7回に力投の高橋遥が力尽きるという結末。チグハグなプレーの連発で楽天に悪夢の3連敗。パ・リーグとの対戦で4勝9敗2分けと大きく負け越し、広島と並ぶ交流戦最下位に転落した。【桝井聡】

▽阪神木浪(8回の走塁について)「完全に自分の準備不足です」

▽阪神藤本内野守備走塁コーチ(8回、三走・木浪の走塁について)「高いバウンドだった。(三塁コーチの)僕も指示しましたけど、行動に移せなかったのは僕の責任。(木浪は)判断をしっかりすることがこれからの課題」

▼阪神が楽天に競り負け、1分けをはさみ6連敗を喫した。阪神が6連敗したのは、17年6月17~30日に8連敗して以来、2年ぶり。17年から18年にかけて交流戦で6連敗したことはあるが、シーズンで交流戦6連敗は球団初だ。これまでは5連敗が3度(16年、12年、09年)あった。