1年前だった。ロッテ今岡真訪2軍監督(45)の指導に迫る記事で「教えない将」と書いた。指導のスタンスは明確で「必要なときに必要なことを言うということ」と話していた。いまや、高校球界のトップスターがひしめくチームになった。17年ドラフト1位の安田尚憲内野手(20)と18年1位の藤原恭大外野手(19)は今季、2軍で戦った。

彼らの現在地をとらえつつ、今岡が伝えてきたことからは、今秋ドラフト1位で加入した大船渡・佐々木朗希投手(18)がこれからプレーする「環境」が浮かび上がる。彼らとどのように接してきたのだろうか。

今岡 安田と藤原に期待するのは、彼らが1軍のレギュラーになったときのマインドです。野球は自分が打てば、チームが勝とうが負けようがいいという選手は絶対にいらない。一番、大事なのはモノの考え方でしょう。

安田は今季、2軍でチーム最多の122試合に出場した。欠場は3戦だけ。19本塁打、116安打、82打点はリーグ3冠だ。だが、定位置の三塁はレアードが君臨し、1軍戦には出場できなかった。その胸中に、もどかしさはあるだろう。

今岡 そりゃ(同い年で同期の)ヤクルト村上もいますから。でも、安田は自分で練習できるし、体も強い。大きなケガをしないし、休まない。実力、モノの考え方も兼ね備えている。

大阪・履正社から入団2年目。過去の高卒スラッガーを見渡しても、日本ハム中田が4年目、DeNA筒香(現大リーグ・レイズ)が5年目以降、レギュラーに定着した。腰を据えて器を大きく広げていく。昨季は失策した試合中に敵のコーチと談笑しているのを見た今岡が叱ったこともあったが、甘えは消えた。主砲としての自覚も出てきた。

今岡 チームが勝つために、お前が4番なんだ。だったら何をするのか、と。たとえ凡打でもいい内容はいっぱいある。粘って投手に球数を投げさせるとか、ピンチなら、投手のところに行くとか。安田が悩むとすれば普通、打てないときでしょう。でも「打てないときにチームを勝たせろ」と言うのが、ここでの教育、育成だと思っています。

昨夏、大阪桐蔭で甲子園をわかせた藤原は「プロの壁」でもがいた。開幕スタメンを果たしたが4月上旬に2軍落ち。打率1割5厘だった。2軍でも8月下旬に左肩を負傷するなど82試合出場にとどまり、打率2割2分7厘、4本塁打だった。俊足強打のホープに伝えたのは、試合に出続ける難しさや大切さだという。

今岡 毎日試合に出ることの大変さ、試合を休まないという根本的な部分を1年目で学んだと思う。1年間、休まずにやることはしんどい。成績どうこうより毎日試合に出る大変さをクリアするのが、彼にとってまず、すべきことですね。

将来を見据えて、井口監督と共有する方針がある。2軍での「1番藤原、4番安田」の固定起用だ。だからこそ、来季2年目の藤原に求めるハードルは高い。

今岡 「試合に出られない」「出ない」っていう自分の感覚や思いがあると思う。「出ない」というのはホッとしている、いま休めているっていう。しんどかったら、こういう自分がいるものです。試合に出続ける重みがチームを背負う。いずれ、日本代表に入る技術は持っているんだから。

相変わらず、技術には、ほとんど触れない。「安田が1軍で4番を打つときは強いでしょう。彼らがレギュラーになったときに常勝軍団ができると、僕は本気で思っています」。ロッテの数年先を見通していた。(敬称略)【酒井俊作】