ロッテが強い。快投が続いていたソフトバンク千賀にも勝った。8回14三振を喫しながら、その8回2死満塁で試合を決めたのは、発熱のマーティンに代わって4番に座ったブランドン・レアード内野手(34)だ。2点適時内野安打で、引き分けを挟んでの5連勝を呼び込んだ。2位オリックスとのゲーム差は3に広がり、最短で明日16日にも優勝マジック26が点灯する。貴重な勝利を呼び込んだ“6分50秒の勝負”に迫る。

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レアードは覚悟を決めて、さっと打席へ入った。

「今夜の千賀君はすごくフォークボールが切れてたと思うし、要所を締めて非常にいい投球をしたと思いますけど、あの場面は2死満塁で何とかしようという気持ちでした」

打席をならし、素振りを一度。1球目、フォークがワンバウンド。打席を外す。2球目、またフォーク。今度は空振り。手袋をはめ直すと、3球目もフォークだ。ファウルにした。

「1~2打席目ではフォークのボール球に手を出して振ってたのもあったんですけど、あの打席の状況では投手の方がプレッシャーすごいかかると思うので、彼のほうがプレッシャーがあったと思うので」

4球目、セットに構えてから9秒かけて投球へ。これもフォークだったが、悠然と見送った。5球目もボールでフルカウントに。

勝負の1球へ。それぞれが間を作り、いざ勝負の45秒後、レアードがタイムを掛けた。その30秒後、千賀がタイムを掛けた。

放送席からは「まるで大相撲の優勝決定戦のよう」と実況が入る。さらに25秒後、捕手の甲斐がタイムを掛けてマウンドへ向かった。レアードは考える。

「正直言って、何が来るか読めなかった。多分直球が来るかなというのは頭の中に少しはあった。歩かせたくないというのもあるし、同点で決勝点が入るわけですから」

長い駆け引き、集中力と集中力の勝負。打席に入って、もう6分40秒がたっていた。6球目。「彼の方がプレッシャーがある」と信じ、149キロのカットボールをセンター返し。懸命に走りセーフになると、仲間2人が生還していた。

「何とかチームのために、という気持ちだったよ」

感情を爆発させ、笑顔だらけの三塁側ベンチを見た。【金子真仁】

▼レアードが10日楽天戦からの最近4試合で3度目の勝利打点(V打)。ロッテの今季V打は多い順に荻野8、レアード8、マーティン7となり、チームトップの荻野に並んだ。