日本野球機構(NPB)の新人選手研修会が12日、オンラインで行われ、元中日、巨人の井端弘和氏(46)が「先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ」と題した講座を担当した。「やっておいた方がいいこと、やってはいけないこと、たくさん経験しました。皆さんの少しでも役に立てれば」と自身の経験を踏まえ、具体的なアドバイスを送った。

【練習で心掛けること】

アマとプロの違いは試合数。プロは毎日試合をする。調整というわけにはいかない。練習も日々、試合のための練習。蓄積疲労を残さないため。家での過ごし方大事になる。

【苦しんだ自分を変えたもの】

1、2年目は2軍生活だった。まず何をしていいか分からず、あっという間に1年間が過ぎた。1年目(98年)は18試合。ケガした選手がいたから自動的に上がっただけ。その選手が治ったら2軍に。

2年目は、新しく入ったドラフト1位が私と同じショートの福留選手だった。私は生きていく道がないなと。2軍で試合に出ていたが、チームが好調で1軍出場が1試合もなかった。危機感を覚えた。秋季練習、オフと無休で練習した。どうせあと1年、何でもやろう、つらい練習もと。

無休で練習した結果、春のキャンプを迎え、バッティング練習で今までと打球が違ったことに気が付いた。今までもやってきたつもりだったが、死に物狂いとはこういうものだと実体験で分かった。3年目のキャンプ、オープン戦と見違える自分を見つけ、少し自信ができた。

【1軍で活躍するためにやったこと】

3年目のオープン戦、大きな分岐点が訪れた。まずオープン戦で、浜松遠征が終わって、そのあと東京遠征に行けたら開幕1軍。静岡で1、2軍の振り分けを当時、監督の星野さんがすると分かっていた。ベンチにいたが、試合に出さないで欲しいと思っていた。序盤の早い段階で、3回だったか、松坂投手。監督が動いて、僕にバントしてこいと。打席に送られる前に「失敗したら2軍だぞ」と言われた。プレッシャーを感じたけど、1回死んでる、クビになると思っていたので、プレッシャーというよりは、よしやってやろうと。

当時、球界を代表する松坂投手。そう簡単にバントは決まらない。向こうもプレッシャーかけてきた。前進してきた。バットにさえ当たればと思ったが、多少、運があったのは、松坂投手がスライダーを投げてきた。体がうまく動かなかったけど、バットの先に当たった。ストレートだったら失敗してたのでは。オフに休まず練習してきた成果。運があった。うまく東京遠征に行けた時、コーチから「外野やったことあるか」と。そこから。全てのポジションを守らせてもらい、内野、外野、全てできると。開幕1軍をつかむことできた。

【スランプ克服法】

どこが悪くて、ここが悪いと分からぬまま打っていたら、打てないフォームが固まっていくだけ。まずは原因分析が重要。投手も言えること。そのまま振ってしまう方が、スランプ脱出には遠回りしてしまう。

まずは自分のいい時を映像に残しておくなり、こうだから打てると知っておくことが重要。私の場合は、打てなくなったときに、ビデオのスローモーション、こま送りを見た。私は打てなくなると、肩の反応が早くなる。ここか、と。スローモーションでゆっくりと、いい形を何回もやっていって、変な反応がなくなって初めてボールを打って、いい形を取り戻すように、やっていた。ぜひ参考にしてもらいたい。

どうしても打てなくなった時は、打つことばかり考えてしまう。右投げ右打ちの人は、打つ体の動きはほとんど一緒。守備をたくさんして、感覚を取り戻すのも1つの手。打つ、投げる、捕るは全てが同じ動き。キャッチボールを大事にするのも1つの手。

【ケガとの向き合い方】

まずは、ケガの度合いを知ること。これならできる、できないは自分しか分からない。これ以上やったら大けがするというなら、やめた方がいい。この程度ならまだできるのなら、うまく痛みと付き合っていくしかない。

ある程度1軍で試合に出ていると、すぐ2軍の選手、違う選手がチャンスをつかんで、そのままレギュラーになるケースは多々ある。私の場合も、それに近いものがあった。試合を休むことは、極力しないように。骨折してても出てやろうというぐらいのを持っていた。入ったばかりの皆さんには、まだまだ先の話と思うが、1軍に出た、レギュラーで出たら、みんなそこを狙っていく。競争に勝つには、そう簡単に休まないで欲しい。

【高校・大学・社会人求められること】

高校生は体づくりが第一優先。焦ることない。あれも、これも、というよりは、1つのことに没頭するのが大事。

大学生・社会人は即戦力と言われる。1年目から勝負をかけて欲しい。

【ファームでの過ごし方】

高校生、大学生、社会人との違いは、毎日試合をやること。まず試合に出る体力を付けて欲しい。疲れて、調整して、試合に出ようという期間は一切ない。きつさでいえば、2軍の方が体力的にきつい。1軍はナイターだし、ドームもある。いい環境。2軍は昼間にやるので、夏は暑いし、それを週6試合やる。体力は大事になっている。そこで結果を出すことが求められる。

1軍慣れ、2軍慣れという言葉を使うが、2軍慣れして欲しくない。2軍で結果を出して満足するのではなく、あくまで1軍を見据えて練習して欲しい。そういう選手は監督・コーチ、一目見て分かる。そういった選手になって。

【チームの一員としての心構え】

あくまで目標は高く、毎日全力でやる。毎試合、全ての打席で打つという気持ちでやってた18年間だった。皆さんもそういう風になってもらいたい。なぜかというと、開幕前、よく3割、30本、15勝というと、そこしか見なくなる。あくまでチームが勝つために、と思って野球をやってもらいたい。まずはチームが勝つために自分が何をするか、どういう仕事をするか、プロ野球生活を全うしてもらいたい。侍ジャパンには行ってほしい気持ちがある。日の丸を背負って戦う上では、チームのためにという気持ちが100%ないと活躍できない。1日1日大切に全力で、試合に、練習に臨んで欲しい。

【ファンへの対応】

ファンの方には声をかけられると思う。その時に、ありがとうございます、頑張りますという一言を添えることで、ファンは、すごく喜ぶと思う。素通りだけはやめて。練習中なので、あとでと。通り過ぎることだけはやめてほしい。子どもたち、ファンに夢を与えていかないといけない。ぜひ、ファンへの対応を、個人個人しっかりとやってもらいたい。

【新人選手へのメッセージ】

期待、希望を胸に入団してきて、自主トレやって、キャンプを迎えわくわくしていると思う。その気持ちをずっと持ち続けてプロ野球生活をまっとうして欲しい。1人でも多く、侍ジャパンに入りたい、入ってもらう選手が増えて欲しい。ぜひ頑張ってもらいたい。