<日本ハム9-1西武>◇25日◇札幌ドーム

 日本ハムが目覚めの快勝だ。つなぎ役の2番田中賢介二塁手(26)が、5打数3安打4打点と大暴れした。初回に先制の2号ソロでチームを勢いに乗せれば、4回には自身初の1試合2本塁打となるダメ押し3ラン、6回には内野安打の猛打賞と乱れ打ち。昨季、パ・リーグ新の58犠打を達成したバント職人が、今季は長打力もあることをアピールした。ロッテとの開幕カードは1勝2敗と負け越したが、打線が奮起し、悪い流れを断ち切った。

 空席が目立つ寂しいスタンドを、2度の快音で沸き上がらせた。メジャー開幕戦を「無視」して、駆けつけた1万6000観衆。田中こと、“ケンスケ”のパワーあふれる新スタイルに酔いしれた。今季初のお立ち台。おどけながらの第一声が、充実の仕事を物語っていた。「ちょっと奇跡が起きました」。自称ミラクルな、初ものづくめ、記録ずくめの自身プロ入り初となる1試合2本塁打、4打点。梨田監督が「ケンスケの1発で火がついた」と絶賛する、チームの連敗ストップのヒーローだった。

 プロ9年目。進化、変化の証しが、2本目の一撃に凝縮されていた。4回1死一、二塁。西口の高め134キロ直球に「分からない。体が反応した」と、自然とバットが出る。打球は右翼席中段へ。初回の先制ソロに続く、特大の3号3ランで試合を決めた。今季からバットのトップの位置を上げた新フォームに取り組む。「本来は低めのボールを打てるようにするため」と、スムーズな体重移動ができるように工夫したものだったが、高めにも一瞬で反応した。

 この日で、G・G・佐藤に並ぶ、リーグトップタイの3本塁打。「暫定キング」に躍り出た。「たぶん今だけだと思う」と自虐的だが、早くも開幕4試合で昨季の本塁打数に並んだ。例年この時期は花粉症に悩まされているが、キャンプ中に球団から配布されたサプリメントを摂取。症状を最小限に抑えている。好調な要因を「やっぱり札幌ドームかな」と挙げた。熱烈応援で、さらにパワーをもらった。花粉の飛散の少ない本拠地。9年目で潜在能力満開の予感が漂う、2本のアーチが舞っていた。【高山通史】