<オリックス3-7ソフトバンク>◇15日◇京セラドーム大阪

 ソフトバンクの「不敗神話」は揺るがない。松中信彦内野手(34)が6回に特大140メートルの同点2ランを放てば、小久保裕紀内野手(36)は1点リードの8回にダメ押し2ラン。今季初となるアベック弾と先発全員となる最多タイ15安打でオリックスを粉砕した。これでMKアベック弾が出た試合は、敵地に限れば18戦無敗。通算でも27勝3敗の必勝パターンで3連勝を飾った。

 ダイヤモンドを踏みしめた小久保は勝利を確信していた。「負けない?

 そりゃそうやろ」。今季初となるMKアベック弾。完成したのは8回だ。吉野のスライダーを軽やかにバットに乗せた。滞空時間の長い、小久保特有のアーチが左翼席に届いた。6回の松中の1発に刺激された、ダメ押しの2ラン。この回一挙4点で試合を決めた。

 ともに今季2号。不思議とシンクロする2人。先に打った松中の同点2ランは特大だった。2点を追う6回。フルカウントから山本のスライダーをとらえた。「完ぺき。文句なしだった」。京セラドーム大阪の右翼フェンスでも5階部分に当てる、140メートル弾だった。この日は06年以来の左翼で先発。3回にはタッチアップを図った俊足坂口をホームで刺し、追加点を阻んでいた。13日西武戦で死球を受けた右ひざに残る痛みを自らの守備とバットで吹き飛ばした。

 「あれ(補殺)は、おまけです。僕は変化球を打って2本。先輩(小久保)は(1号で)直球を打ってますから、監督が喜ぶのは先輩の方ですよ」。松中同様に小久保も控えめだ。「今日はレフトの信彦の補殺やろ。同点本塁打で流れも変わった。おれの本塁打は、おまけ」。存在を意識し合う、MKがアベック弾を放った試合はビジターに限れば18戦無敗。9年間負けてない。通算も27勝3敗という必勝パターンは健在だった。

 小久保は14日の移動日を利用し、1人、足を東京へ向けた。巨人時代から通う武術家の元で身のこなしなど指導を受けた。「去年は1度も行けなかったからね」。常にベストを目指した準備で、通算350号にも2本に迫った。松中も打撃不振の中、3月25日のロッテ戦から左翼の守備練習を続けてきた。3回の補殺は今季初の守備機会で決めたものだった。

 MK砲にけん引された打線は今季初となる先発全員の15安打を放った。王監督は「両方とも効果的な本塁打だった」と目尻を下げ、開幕後に個人面談まで開いた主砲の1発を喜んだ。「本当に良かった。打ちあぐねていたから。松中のは値千金の本塁打だったね」。5カードぶりに初戦を取り、今季2度目の3連勝。「そうそう悪いことばかりは続かんよ」と高笑いして帰りバスに乗り込んだ。

 指揮官を満足させた、左右2本のアーチ。昨年12月19日。小久保と松中は2人だけで酒を交えて会談した。腹を割った激論の末、V奪回と王監督の胴上げのため死力を尽くすと契りを結んだ。2人の目標はぶれはしない。王監督を頂点に連れて行くまで、競演は終わらない。【押谷謙爾】