<広島8-6横浜>◇4日◇広島

 広島が大逆転勝ちで3位におどり出た。4点を追う8回に一気呵成(かせい)の猛攻撃。新人の小窪哲也内野手(23=青学大)が横浜の守護神寺原を打ち砕く、会心の決勝二塁打を放った。肝っ玉ルーキーの活躍で今季初の4連勝。ついにAクラスまではい上がってきた。今日も勝てば借金生活にも別れを告げられる。5月5日は「5割の日」。気前よく、鯉のぼりを掲げてみせる。

 ここまで気持ちのいい雄叫びを上げた選手は久しぶりだ。一塁に走り出した瞬間、小窪は声にならない声を張り上げた。右こぶしを強く握り、二塁に到達するとまた何度もガッツポーズ。高ぶる気持ちを余すことなくアクションした。

 小窪

 夢のようです。あまり覚えていません。叫んでましたよね、僕…。自分のワールドに入っていました。(カウントが)追い込まれていたので、どんな汚いヒットでもいいから食らいついていこうと。ホント…すごいお客さんのおかげで勝てました!

 初めてのお立ち台にも8回の興奮を持ち込んだ。ヒーローにだけ許される一連の「儀式」に戸惑いながらも顔はゆるみっ放し。大観衆の小窪コールに笑顔で手を振った。スタンドには両親もいた。連休のまっただ中で新幹線の混雑が予想されたため来る予定はなかった。「午前10時半に突然『今から行くから』と連絡があって」。こどもの日を前に、最高の親孝行だ。

 小窪のご両親はエスパーかもしれない。とてもこんな歓喜を予想できる展開ではなかった。7回まで完全な負けムード。3回に2点を返してからは1人も走者を出せなかった。

 小窪をヒーローに祭り上げたのは先輩たちだった。2-6の8回、先頭の代打緒方が中前打で出塁した。赤松も安打で続き、天谷四球で無死満塁。ここで横浜ベンチは木塚を投入した。「このときに逆転のチャンスがあると思った」とブラウン監督は振り返った。

 怒とうの攻撃が始まった。アレックスが押し出し四球でまず1点。栗原が深々と犠飛を上げて2点目。2点差となり、横浜は勢いを止めるために守護神寺原にスイッチした。が、火消し役をカープ打線が「油」に変えてしまった。

 代打前田智が左前打、石原も左前に運んでついに同点。舞台は整った。小窪がとどめを刺した。「ひょとしてチャンスで回ってくるんじゃないかと思って準備していた」。外寄りの速球に力負けせずライナーで右翼線を破った。

 4月26日に不振の梵に代わって1軍初昇格。29日の初先発で初安打、初打点とブレークし、そこから5試合連続で先発している。自分でつかみ取った1軍遊撃の座だった。2月中旬に2軍落ちを告げられてからは情けなさを募らせた。

 「ソフトバンクの大場が活躍しているのを見て、僕はすごく刺激を受けました。絶対1軍に上がってやろうと思った」。大学時代から仲のいい豪腕ルーキーが発奮材料になった。この日は3度凡退していたが「切り替えられた」と冷静に決勝打につなげた。

 絶妙のタイミングで5月5日を迎えた。減らし続けた借金はついに「1」。子どもたちは、生きのいいコイたちがグラウンドを泳ぎ回る姿を待っている。カープの黄金週間はこれからが本番だ。【柏原誠】