<広島7-8日本ハム>◇17日◇広島

 ダルビッシュが打った、走った、投げた。日本ハム・ダルビッシュ有投手(21)が広島3回戦(広島)で、プロ入り初の長打で初打点を挙げた。必死の力走での二塁打だった。投げては初めて先頭打者アーチを浴びながらも7回3失点9奪三振の粘投で、初ものずくめデーに7勝目を挙げた。チームは1点差に追い上げられながらも8-7で逃げ切って交流戦13勝目を挙げ勝ち越し。V2に向け、2位タイをがっちりキープした。

 右ひざ部分に真っ黒な土をつけたダルビッシュが、久々の白星をかみしめた。降板後の8回に1点差となったが「(終盤は)ちょっとヒヤヒヤしたけどみんなを信じていたし、良かったです」。バスへの帰り道、グラウンドで何度も右手を挙げ、声援に応えた。

 初めての広島市民球場で初物ずくめだった。先頭の赤松に2球目をたたかれ「中学のときにある」というプロ初の先頭打者被弾。シュート回転した内角球を左翼ポール際の中段まで運ばれた。「完全にファウルだと思ったんでびっくりした」。夕日が照り注ぐ左翼側を見上げ「えっ」と顔をしかめた痛打だった。

 初めてのマウンドにも戸惑った。「投げにくい」という情報を親友の西武涌井から仕入れていたが「土(の質)は関係ないけど傾斜ですね。5回くらいまで修正ができず苦しかった」。4回まで4与四球ながら要所を締め、続投志願も首脳陣に制止され7回3失点。防御率1位は守った。

 投げるだけではない。1点を追う2回2死二塁で巡ってきた第1打席。2-2からの7球目、外角144キロの直球にうまくバットを合わせた。ライナーの打球は右中間を転々とする同点二塁打となり、プロ初長打で初打点を挙げた。2-0と追い込まれてから粘っての一打。「真っすぐを投げてくるカウントまで持って行けた」と、相手バッテリーの心理を読んだ殊勲打だった。

 必死に走って二塁へ。ぎこちない右足からのスライディングも「プロ入り後?

 初めてですね」とニヤリ。これまで通算18打数1安打だった打者が放った06年5月18日阪神戦以来、2年ぶりの安打。「打った瞬間?

 芯でとらえたと思った。でももうないですよ」とおどけた。打席に入る今回に向け、寮のウエートトレーニング室で、ひそかに素振りを続けた。打線の援護を受けたが、自らの打撃でも自分を助けた。

 ここ2試合連続で完投負けを喫していたが「気持ちが切れなかったのは奥さん(サエコ夫人)がいろいろ(激励を)言ってくれたから」と口にした。チームはこれで交流戦の勝ち越しが決定。残り3試合、エースの奮闘で、2連覇へ向け確かな勢いがついた。【村上秀明】