<西武4-1ロッテ>◇27日◇大宮

 大宮の夜空に舞い上がった白球の行方を、誰もが目で追いかけた。ロッテ戦の5回、フルスイングした西武ブラゼルの打球は、どこまでも伸びた。県営大宮球場の右翼スタンドをはるかに越え、隣接するサッカー場へ。Jリーグ大宮が使用するNACK5スタジアムの、ペナルティーエリア内まで転がった。まさにPK弾。「2ゴールを決めた気分だよ」とブラゼル。キングタイ18号2ランにかけ、気の利いたジョークで笑いを誘った。

 推定飛距離140メートル。球場に携わって足かけ40年になるグラウンドキーパーの大沢章平さん(68)も驚いた。「西武の大島選手が高校時代(埼玉栄)でネットを越したのは見たけど、サッカー場まで届いたのは記憶にないね」。今年からチーム名に「埼玉」をつけた地域密着の目玉イベント。パでは54年ぶりの大宮開催で、異例の特大弾が満員の2万289人を沸かせた。帰り際にはボールの落下点を見届けようと、フェンス越しにサッカー場をのぞき込む人が続出。けた違いのパワーは、試合後の余韻も楽しませた。

 負けていれば、首位こそ守るものの2位日本ハムにゲーム差なしで並ばれていた一戦。天敵・成瀬を攻略し、交流戦からの連敗も6で止めた勝利に、渡辺監督は「新たなファン層拡大のためにも、印象づける試合がしたかった。うちとしては最高のゲーム」と胸を張った。3回には、栗山も右中間へライナーで突き刺す5号決勝ソロを放ち、12球団最速のチーム100号に王手。1発の魅力あふれるナベQ野球が、大宮ファンの心をつかんで離さなかった。【柴田猛夫】