ソフトバンク王貞治監督(68)が投手陣にカーブの減速指令を出した。チームが全体オフの7日、福岡ヤフードームで報道陣に対応した王監督は、投手陣について「我々は常に進化しないといけない。遅い、100キロ台のカーブを習得とかね。緩急差をつけないと」と発言。具体的な球種を口にしたのは、王監督が常々求める「技術革新」の精神を再認識してもらうためだった。

 きっかけは5日オリックス戦でパウエルのカーブが120キロ台だったこと。「カーブを投げる投手がスライダーを覚えると、カーブが速くなって緩急がつかないことがあるから」。早実時代にカーブを得意とした王監督は、親指をはじき上げるカーブの握りを実演しながら、熱っぽく語った。

 1軍では杉内が「遊び感覚」とはいえ、日本ハム多田野ばりのスローボールを練習で投げ、7月8日の西武戦でも王監督が審判団に抗議する間にマウンドで披露した。王監督は「多田野のは極端」としつつ、「スローカーブは50%、直球は80%ストライクが入れば勝てる」と精度の重要性を訴えた。現役時代に対戦した中日藤沢のパームボールの遅さなど、遅球談議は尽きなかった。

 「ほら、フォークを投げるために風呂の中で温めた指を広げたり、指の間を切ったりするって言うじゃない。そういうのは常に訓練なんだ」と王監督。漫画ドカベンに登場し、指の間を広げる手術を受け、フォークを投げた殿馬一人の例まで口にした。シーズン残り43試合。5ゲーム差をつけられた西武を逆転するのはもちろんだが、選手たちに技術屋として成長を求める、王貞治ならではのメッセージだった。【押谷謙爾】