<巨人0-8中日>◇26日◇東京ドーム

 中日の5年目左腕・川井雄太(ゆうだい)投手(28)が巨人戦で今季初登板し、1年ぶりのプロ2勝目をマークした。緩急自在の投球で5回4安打無失点と先発の大役を果たした。登録名を昨年までの「進」から変更して臨む勝負のシーズンを、最高の形で滑り出した。チームは阪神、巨人に2カード連続勝ち越しとなり、勝率5割に復帰。投打の歯車がかみ合い、再び2位へ浮上した。

 今季初登板でも自分を見失うことはなかった。涙の初勝利から約1年。川井が巨人打線の長所を消す投球で今季初白星を挙げた。先発して4回まで毎回安打を許したが、長打力を警戒し、低めを意識した組み立てで本塁を踏ませなかった。

 「いいリズムで投げられた。低めに投げればゴロになるし、後ろも守ってくれると思った」。初回に打線の援護をもらったが「楽になれたということはなかった」。それでも「1人1人気持ちで投げた。いけるところまでいこうと思っていた」と強気を貫いた。

 今年は春季キャンプからオープン戦序盤まで一度もファームに落ちることはなく、プロ5年目で初の開幕1軍も夢ではなかった。だが、3月5日のオープン戦で巨人に4回5失点。即座にファームへの降格を告げられた。

 翌日、川井は人気のないナゴヤ球場で自分が置かれた現実をしっかりと受け止めた。「仕方ない。またここでしっかり作っていきたい。開幕?

 そんな近いところはもう見ていません。いい状態で上がれるように」。開幕への思いを断ち切り、自らの“開幕”に向けて気持ちを切り替えた。

 そして1軍昇格のチャンスをたぐり寄せたのは10日のウエスタン・オリックス戦。プロ初完封で失いかけていた自信を取り戻し、満を持して1軍での登板機会を待っていた。この日は16日ぶりのマウンド。なかなか登板日を伝えられず、調整の難しさもあったが「いつでもいけるようにと言われていた」。落合監督も「悪いやつは上げない。状態がいいから上げたんだ」と好投をたたえた。

 オフには知人のアドバイスを受け、登録名を「進」から「雄太」に変更。昨年4月16日の巨人戦で挙げたプロ初勝利以来となる通算2勝目は、「川井雄太」としての初勝利でもあった。「よかったです。まあ、心機一転ということで」。少し照れながらはにかんだ。

 昨年は初勝利の後、9度の先発で1度も勝ち星を挙げられなかったが、もう同じ轍(てつ)は踏まない。「この1勝を大事にしたい」。ちょっぴり遅い開幕を白星で飾った川井の視線の先には、次の勝利しか見えていない。【福岡吉央】

 [2009年4月27日12時12分

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