<パCS第1ステージ:楽天4-1ソフトバンク>◇第2戦◇17日◇Kスタ宮城

 キャプテンが泣いた。ソフトバンク小久保裕紀内野手(38)は終戦直後の一塁ベンチで感情のまま涙を流した。おえつが収まるまでロッカー室で待つと、最後に移動バスへ乗り込んだ。目を真っ赤に染め、視線を地面に落とした。何も言葉が出なかった。

 チームが苦手の楽天田中に対して1発こそなかったが、先頭打者の2回と7回に左前打で出塁。1点先制された直後の5回にはベンチ前で円陣を組み、士気を高めた。それでも札幌行きを懸けた第1ステージ2試合で1度も楽天をリードできなかった。地力で負けた。

 昨オフ。小久保は1人、世界遺産でもある鹿児島・屋久島で登山に臨んでいた。シーズン終盤に左かかと痛で離脱、チームは最下位に沈み、王監督は勇退…。主軸として貢献できなかった。「単に登りたかった。でも登っていたら頭の中は空っぽになっていったね」。アルミの折り詰めに入った弁当を食べながら08年に区切りをつけるように歩を進めたのかもしれない。

 今季、秋山監督が現役時代の99年以来、10年ぶりに復活したホークスの主将に就任。まとめ役を任された。勝負どころではマウンドに歩み寄り、投手を励ました。同じミスを重ねる大隣には「公開説教」もした。「こいつなら分かってくれると思うから言わないかんと思った」。他人をしかるたびに自分の襟を正した。9月中旬のヘッドスライディングで痛めた左親指が曲がらないまま、全試合に出場した。練習も手を抜かなかった。主軸として結果で示しをつける重圧もそばにあった。

 日本シリーズに挑戦すらさせてもらえなかった。39歳になる来季は4年契約の最終年。最近は「残り少ない野球人生」と口にする。ホークス黄金期を知る小久保はこの1年に懸けていたが、自分を含めてチームの力が足りなかった。胸にこみ上げるいろんな思いが複雑に絡み合い、主将の目から涙があふれた。

 [2009年10月18日12時31分

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