<パCS第2ステージ:日本ハム2-3楽天>◇第3戦◇23日◇札幌ドーム

 ジ・エンドには早すぎる。楽天が日本ハムに3-2で逆転勝ちし、クライマックスシリーズ(CS)第2ステージ1勝目を挙げた。野村克也監督(74)は負ければ監督生活最後となる一戦で、判定を巡って審判に抗議するなど執念を見せ、選手も奮起した。

 ゆっくりとした足取りで、野村監督は二塁審判に近づいた。その遅さが、逆に迫力を感じさせた。4回1死一、二塁で、リンデンの遊ゴロを金子誠が二塁へ投げた。一塁走者中島の足が先にベースについたかに見えたが、秋村審判はアウトの判定。野村監督はベンチを飛び出し、抗議した。

 佐竹一塁コーチも「珍しいよね」と驚くほど、激しい口調で気持ちが入っていた。約2分ほどの抗議で引き下がったが、負ければ最後の試合。いつも以上に勝利にこだわった野村監督の姿勢に、選手が奮起した。その抗議直後に、草野が貴重な3点目をたたき出す左前適時打を放った。草野は「打っちゃったよ」と興奮気味。野村監督は「あれはセーフやろ」と、あきれ顔だった。

 22日の試合後、三木谷会長と会談を行った。同会長から再度、名誉監督就任を打診され、野村監督は「すっきりしたよ。気分爽快(そうかい)。晴れ晴れと退散します」と笑顔を見せた。球団批判を繰り返した毒々しさは消え、最後になるかもしれなかった試合を前に、すがすがしさも感じさせていた。

 「もう無理だよ」とあきらめ宣言後、土俵際で挙げた1勝だった。「まだ無理だよ。光?

 見えないね。暗闇のまっただ中だ」と言って笑わせた。だが、1勝したことで欲が出たのも事実。「こうなると初戦の逆転負けがこたえる。4点差だったもんな。(逆転を許した福盛が)八百長みたいなことしやがって」。スルリと逃げた1勝をあらためて惜しんだ。

 まだまだ後がない戦いは続く。「あと3つ勝たないといけない。向こうはあと1つか。相手の選手が(楽天より)良く見える。(自分が)弱気になってるというか、劣勢になってるというか…」。まだ威勢のいい言葉は出てこないが、野村監督は最後の最後まで死力を尽くす。【竹内智信】

 [2009年10月24日9時54分

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