ソフトバンク小久保裕紀内野手(38)が球界の慣例を覆す試合前トレーニングを敢行する。22日、シーズン中に早出ロングティー調整をメニューに組み入れることを明言。プロ17年目で初めての試みとなる。打撃フォームも長距離にこだわって上体のひねりを深くしている。チーム最年長スラッガーは、試合前からガンガン飛ばして本番に突入-。異例調整でアーチスト復活を目指す。

 チームを束ねる主将小久保が、異例の調整法導入を胸に秘めていた。全体練習を終え、斗山(韓国)との練習試合を行うチーム本隊と分かれ、室内練習場で居残り特打に30分、汗を流した。さらに、15分のティー打撃。24日にはキャンプを打ち上げ、26日からチームのオープン戦開幕(対広島、福岡ヤフードーム)を迎える。キャンプ総仕上げとも言える打ち込み期だが、今年はシーズン中にもバットを振り込むことを予告した。

 小久保

 今年は早出(特打)じゃないけど、初めてシーズン中もロングティーをやろうと思っている。試みようかな、と。

 若手のアーリーワークとは別物だが、プロ17年目で初めて、全体練習前に早出ロングティー調整を取り入れようというのだ。

 試合のないチーム練習時に特打を行うことは、過去にも多々あった。だが、ゲーム時は違う。ホークスにFA復帰した07年には筋力トレーニング、09年にはストレッチを全体練習前に行うなど「準備」に時間を費やしていた。バットを手にグラウンドに姿を現すのは、極めて異例だ。

 順調な調整が決断を後押しした。今キャンプでは投手方向からボールを投げてもらう「正面ティー」ではなく、横からトスしてもらうロングティーを重視。距離アップを求め、センター方向から背番号9が見えるまで上体を深くひねった構えも違和感がなくなってきた。「(構えは)なじんでいます。今はヘッドスピードのキレが上がっている。ティーをしたときにそれが分かる」と自信を言葉にした。

 ベテランになれば、長いシーズンを乗り切る体力を温存しようと練習量を落とすケースが多い。だが、体全体を使わなければいけないロングティー調整に、こだわるのは理由がある。契約最終年。通算384本塁打。この日、球場を離れる際には「体が小さくなったから、筋トレ行ってくるわ」と笑顔をつくった。球界の慣例にはとらわれない。スラッガーの本能が、アーチを求めているのだ。

 [2010年2月23日11時39分

 紙面から]ソーシャルブックマーク