<オリックス5-0中日>◇7日◇京セラドーム大阪

 開幕1軍への激走だ!

 中日のドラフト3位中田亮二内野手(22=亜大)がオリックスとのオープン戦(京セラドーム大阪)の8回、代打で登場して左前打を放った。相手のミスを見逃さない好走塁で一気に二塁打とすると、さらにタッチアップで三塁に進んだ。体重118キロ巨漢の激走に、地元大阪のスタンドからは拍手が起こった。打つだけでなく、走れることも証明したブーちゃんがまた1歩、開幕1軍へと近づいた。

 速い!

 敵地であり中田亮にとっては地元大阪のファンの度肝を抜いたのは8回だった。代打で登場した背番号50はオリックス加藤のフォークに食らいついた。しぶとくバットに当てた打球が左前にポトリ。処理にもたついた左翼T-岡田がやや後ろにそらした。ブーちゃんはこのスキを逃さなかった。一塁を蹴ると、118キロの巨体を揺らして二塁へ。ストライドは短いが、回転数の速い独特の“ピッチ走法”で滑り込んだ。

 さらに「ブーちゃん劇場・大阪編」はここからだ。続く荒木が右飛を打ち上げると、すかさずタッチアップ。右翼浜中の肩との勝負だったが、余裕を持って三塁へ到達した。体形からは想像できない大胆かつ俊敏な動き。スタンドからは「おお~…」というため息と拍手が起きた。得点にこそならなかったが、初めて首脳陣に実戦の場で自慢の走力を披露できた。左の代打として開幕1軍入りを狙う中田亮にとっては「代走は不要」というアピールができただけでもプラス材料だ。

 周囲は先入観から「鈍足」と決めつけるが、本人は幼い時から足には自信を持っている。中学校時代、すでに体重が90キロあったが、運動会ではクラス対抗リレーの選抜メンバーに選ばれていた。そして、いざ走ると俊足ぶりで周囲を驚かせたという。亜大ではリーグ戦97試合で6盗塁を記録し、プロ入団が決まると真顔で「2ケタは走りたい」と宣言。50メートル走は6秒4だが、相手がついつい油断してしまう?

 体形を利用して次の塁を奪うのがブーちゃんの真骨頂だ。

 「追い込まれていたので食らいついていこうと思いました。何とか落ちてくれと思いながら走っていました。結果が大事なので」。試合後、汗だくの中田亮はほっとした様子を見せた。1日ロッテ戦でプロ1号本塁打を放って以来の安打を放ち、好走塁を見せたことは1軍生き残りへの大きな材料になる。辻総合コーチは今後について「他のメンバーもいるし、まだわからない」と明言こそしなかったが、あす9日の西武戦(岐阜・長良川)には主力の大半が出場しないため帯同できる可能性が高い。1戦、1戦が勝負のブーちゃんにとって、この日はまさに開幕1軍への道を切り開く激走だった。【鈴木忠平】

 [2010年3月8日10時44分

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