<ヤクルト2-1ソフトバンク>◇12日◇神宮

 まさに、執念だ!

 ソフトバンク松中信彦外野手(36)が、オープン戦11打席目で初安打を放った。ヤクルト戦(神宮)に4番DHでスタメン出場。7回表の第3打席で、ヤクルト石川からしぶとく右前へ運んだ。昨年10月に右ひざの手術を受けたが、6日の巨人戦で復帰。この日は初めて走者として一塁に残った。打撃面、走塁面ともに開幕スタメンには厳しい状態だが、最後まであきらめない。

 泥臭いヒットだった。7回表2死走者なしの第3打席。松中はカウント2-1から2球ファウルで粘った。ヤクルト先発石川が投じた6球目。内角低めスライダーに詰まらされながら、体全体で振り抜いた。打球はハーフライナーで二塁手の頭上を越え、右前へポトリと落ちた。復帰後11打席目の初安打。派手さも、豪快さもない。それでも、昨秋の手術後リハビリに励んできた主砲にとって大きな一打だった。

 松中

 まあ、前の打席でもとらえられていたし。ただ、スパイクじゃないので滑って、とらえたつもりでもファウルになった部分もあった。

 この日も、右ひざへの負担を軽減するためスパイクをはかず、底が平らなアップシューズで打席に立った。「スパイクは怖い?

 いや、まだ段階を踏んでいるところなので」。足に負担のかかる人工芝の球場だけに、おのずと慎重になった。右足に踏ん張りが効かないため、いわゆる壁がつくれないのは覚悟していた。100%の打撃はできないが、開幕スタメンへ向け、投手の生きた球に反応することに重きを置いた。

 安打で出塁すると、そのまま一塁に残った。実戦復帰5戦目で安打も初めてなら、走者として塁上に立つのも初めて。続く小久保が投直に倒れて全力疾走のチェックはできなかったが、また一段、階段を上がった。

 依然、開幕スタメンが厳しいことに変わりはない。秋山監督は「ヒットはいい当たりの方がいいなあ。走る方もだけど、まずは打つ方をもっと上げないとな」。現状では、打撃面、走塁面ともに「開幕スタメン」にGOサインを出す状況に至っていないことをうかがわせた。

 それでも、松中はあきらめない。9回表2死走者なしでは、初めて合成樹脂製のポイントソールのスパイクに履き替え、ネクストバッターサークルに入った。打席の松田が三振し試合終了となったが、打席が回ればそのまま打つ覚悟だった。「(ヤクルト守護神)林の速い球を打席で見たかったんだけど…」。オープン戦は残り2試合。主砲は前だけを見て「開幕4番DH」を目指す。【倉成孝史】

 [2010年3月13日11時37分

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