<巨人11-3中日>◇10日◇東京ドーム

 巨人山口鉄也投手(26)が、先発として初勝利を挙げた。先発2戦目となった中日戦は、8回途中まで5安打3失点。好調の森野、和田の中軸を無安打に抑えた。ところが試合後、原監督はケガで離脱中の守護神クルーン不在の間は、山口を再び救援で起用することを明言。越智、山口のダブルストッパーを形成することになった。チームは中日に並び、再び同率首位に立った。

 苦手なはずのお立ち台からの景色が、いつもと違って見えた。中日チェンに投げ勝った末の先発初勝利。チームを同率首位に導いた山口は「やっぱり(先発での勝利は)中継ぎの時より全然うれしいです」と声を響かせた。これまで感じたことのない快感が体を支配する。普段は「緊張して頭が真っ白になる」照れ屋な男が、大観衆を前に雄弁に語った。

 全球全力で投げる「パワーピッチング」に、限界がないことを証明した。2点リードの8回無死一、三塁、3番森野を高めの直球で詰まらせ、三塁併殺打に仕留めた。投球数は自己最多の102に達していたが、140キロの直球にはキレと威力があった。

 序盤は力みから制球を乱した。2回は無死満塁から小山に犠飛、4回にはブランコのソロ本塁打で勝ち越された。前回広島戦は4回途中4失点KO。悪夢がよみがえってきたが、阿部の言葉が原点を思い出させてくれた。「あと1回で交代でもいいから」。主将の熱いゲキに「1回1回全力で」投げるスタイルを貫いた。5回から7回まで無失点。「うまく立ち直れた」と修正能力の高さを見せた。

 先発転向後、眠れない日々が続いた。「布団に入ってもなかなか寝付けなくて」。気が付けば、パソコンの電源を入れていた。動画サイト「YouTube」で、自身の投球シーンを見るためだった。映像をチェックし、部屋の1室でシャドーピッチングを繰り返した。真剣に悩み、考え、自身と向き合う中で、心と体を「先発仕様」に切り替えていった。「苦しんだ分、(初勝利まで)長く感じた」。偽らざる本音だった。

 試合後、原監督は苦渋の決断を明かした。「(山口は)越智とともにもう1度リリーフに戻ってもらう。正常なチーム状態に戻ったときに、先発に戻すことを考えます。昨日の練習前に本人には話しました」。守護神クルーンがケガで離脱中。救援陣が手薄な現状から、越智との「ダブルストッパー」に指名された。再転向にも山口は「どこで投げようと、僕は精いっぱい頑張るだけです」と返した。先発勝利で得た確かな自信が、大きな財産になる。【久保賢吾】

 [2010年4月11日9時13分

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