<広島3-2ヤクルト>◇13日◇マツダスタジアム

 選手会長の一振りで試合を決めた。広島が石原慶幸捕手(30)の劇的な1発で今季初のサヨナラ勝ちを収めた。2-2同点の延長10回裏、ヤクルトの3番手高木から左中間へたたき込んだ。この勝利が、今季マツダスタジアムでの初勝利でもあった。開幕から苦しい展開が続くが、この勝利をきっかけに、巻き返しを図る。

 石原は無我夢中だった。劇的な1発が左中間スタンドへ着弾するのを確かめると、思わずガッツポーズが出た。延長10回も2死無走者。石原は、ヤクルトの3番手高木の投じた初球のフォークを見逃さなかった。快音を残した打球は、カープファンの歓声の中、ギリギリでフェンスを越えた。

 初回に2点を奪ったが、3回に追いつかれると守ってはピンチの連続。打ってはヤクルト館山に抑え込まれた。胃がきりきりと締め付けられるような展開を、選手会長のバットが吹き払った。石原にとっては09年6月18日の楽天戦で放って以来通算3本目のサヨナラ弾。だが、そんなことはどうでもよかった。本拠地マツダスタジアムで、今季初勝利をファンと喜び合えたことがうれしかった。

 開幕から7連敗を喫するなど、チームはどん底にあった。マツダスタジアムでも5連敗中だった。お立ち台で石原は「なんとかマツダで勝ちたいとみんな思っていました。やっと勝ててうれしい。(サヨナラ本塁打は)何本も打てるものじゃないし、皆さんの前で打てて本当に幸せだしうれしいです」と声を張った。

 09年オフに、倉から選手会長を譲り受けた。就任直後から「チーム一丸となって優勝を目指す」と繰り返し言ってきた。だからこそ、この日の1発がことのほかうれしかった。石原は「これからもチーム一丸となって勝ち試合をお見せしたいと思います!」と力強くファンに宣言した。ベンチ裏に戻ると「この流れをいい方向へ持って行きたい。今日は全員の力で勝てた。切り替えて明日からやっていきたい」と冷静に話した。まだまだ、この1発くらいでは借りは返せない。

 野村監督も、劇的な1発での本拠地初勝利に「長かったというか、これで穴が開いた。呪縛(じゅばく)も解けてホッとしている。でも、明日です」と前を向いた。この勝利は、反撃のきっかけに過ぎない。【高垣誠】

 [2010年4月14日10時55分

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