<広島1-0日本ハム>◇15日◇マツダスタジアム

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が連続無失点を自己最多の28イニングに伸ばしたが、白星には届かなかった。広島戦に先発し8回6安打無失点。07年にマークした25イニングの自己記録を更新する好投も、降板後の9回にチームはサヨナラ負けを喫した。4月24日楽天戦の途中から得点を許さず、この日を含めて3試合連続無失点とすごみを見せながら、今季5勝目に2試合連続で足踏みとなった。

 ホームベースの番人になっても、白星が遠い。ダルビッシュの快投が、また無情な結果になった。自己新の28イニング連続無失点を達成。この日も初回からスコアボードに8個の「0」を刻んだが、0-0の9回に無情のサヨナラ負け。チームの今季最長連勝が「5」でストップした。悲劇のエースは「切り替えるしかない」と気丈に前を向いた。

 すごみが、また際だった。前回8日楽天戦は岩隈と投げ合い、ともに9回無失点で譲らず降板。今季最多156球の熱投を終え、迎えたこの日のマウンドでは別人のように変身した。早いカウントで直球狙いの戦略に見えた広島打線を逆利用。「真っすぐを狙ってきていたのでボールを動かした」。手元で微妙に変化させた。しかも故意にコースを甘くし、打ち気を誘うなど大胆かつ巧妙だった。

 勝負どころだけ、スイッチを入れた。6回2死二、三塁、重盗を許すなどして広げたピンチ。好調の栗原を迎え、本気になった。敬遠で満塁策の選択肢をベンチから示されたが「逃げる気はなかった」。この日最速151キロ外角直球の初球で宣戦布告した。カウント2-2から最後は外角149キロで押し込む。ライナー性の当たりも、詰まらせて中飛。5球中4球が速球の真っ向勝負で、しのいだこの回。07年の25イニング連続無失点の壁を超えた。

 この日、ここ2登板が150球超だった疲労を考慮し、100球を降板メドに設定されていた。「無理をすると(今後の)体のこともある」と自制。事前に条件を限定された中でのクレバーな投球プランで、2戦連続のエース対決を譲らなかった。3回の今季初打席で、速球をとらえて中前打とバットでも全力投球。打者・前田健との対決では「向こうも興味あると思うので」とこの日の全球種を投げて見せる、無駄がない99球だった。

 防御率1・50で、登板9戦でまだ4勝。「1点でも2点でも援護してあげれば…」。梨田監督の嘆きがせめてもの救い。我慢のダルビッシュが爆発の時まで、じっと待つ。【高山通史】

 [2010年5月16日10時27分

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