<ヤクルト4-2阪神>◇26日◇神宮

 アントニオ猪木の1、2、3ダ~でリズムを狂わされたわけではなかろうが、猛虎打線が一転、沈黙した。前日まで8試合連続2ケタ安打中だったが、卍固めを食らったかのように散発5安打。終盤、リリーフ西村憲投手(23)は、延髄斬りのようなヤクルト打線の切れ味鋭い2被弾を浴びプロ初黒星。1、2、3とリズムよく貯金10達成とは行かず…。乾杯ギネス記録達成の敵地で「引き立て役」に回ってしまった。

 攻めることの難しさを痛感した試合だった。浅井のタイムリーと暴投による2得点。完全に封じられたわけではないが、打線の迫力からすると、どこか寂しかった。「やっぱり取れるときに1点でも2点でも取っておきたかった」。真弓監督は敗戦の弁で攻撃面を真っ先に挙げた。連勝は3、2ケタ安打は8戦連続でストップ。永遠に打ち続けることは不可能なのは分かっているが、打線の足踏みが黒星に直結したのも事実だ。

 想定外の展開だった。左腕石川とは4月28日の前回対戦で、6回3得点と攻略した。しかし変化球を低めに集めた投球で、序盤3回は打者9人で抑えられた。和田打撃コーチは「我慢できずに低めに手を出して、ゴロ凡打になり、術中にハマった」と苦い表情を見せた。5回にはベンチ前で円陣を組み、1点を先制したが、弾みをつけるほどではなかった。7回の好機では林、金本、桧山の3者連続代打で勝負をかけたが、1点しか奪えない。今季は左腕が先発した試合では、18勝5敗1分と頼もしいデータが残っていた。それでも左腕に強い平野、マートン、新井の3人で1安打。打線はやはり「水もの」だった。

 真弓監督の就任以来初めて貯金10に挑戦したが、失敗に終わった。「2ケタにいかなアカン」とチームに号令をかけているが、低調な攻撃のときに、どう戦うかが、今後の課題となる。「(石川は)今日は良かったみたいだ。なかなか攻略できるチャンスもなかった。こういうゲームを拾っていきたいんだけど…」。

 今カード後には、中日、巨人との上位決戦が待っている。巨人とのゲーム差は交流戦明けでは最大の4に広がった。厳しい戦いが予想されるだけに、1点にこだわる野球を見せたいところだ。和田打撃コーチは「毎回打てるものでもない。調子が落ちたわけでもないし、切り替えて試合に臨むしかない」と前を向いた。気合を入れ直す敗北ととらえて、まずはヤクルト戦の勝ち越しに全力を尽くすしかない。【田口真一郎】

 [2010年6月27日10時48分

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