<中日3-1広島>◇1日◇ナゴヤドーム

 頼れるセットアッパーが今季11度目のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。中日浅尾拓也投手(25)が9回からの2イニングを完全に抑え、今季9勝目。ベンチで岩崎達のサヨナラ弾を見届けると、顔をくしゃくしゃにして祝福の輪に加わった。

 「甘い球もいくつかあったけど、抑えられたら何でもいい。せっかくいい投手から点を取ってくれたので、勝ちたいという気持ちが強かった」。

 2イニングを投げるのは、7月28日の巨人戦以来、今季8度目。1人も走者を出さず、完ぺきに広島打線を封じ込めた。「行けと言われたら行きますし、使ってもらっているところで結果を残したいですから」。今季62試合目。開幕から無休で投げ続けている体には当然疲労もたまっているが「投げられるだけ幸せですから」と、決して弱音は吐かない。

 大好きな野球を毎日できる喜びが、エネルギーの源だ。昨年オフ、ドミニカ共和国のウインターリーグに参加。帰国時に、ロッカー掃除の仕事をしながら野球選手を目指す少年にスパイクをプレゼントした。「よかったら、これ使って!」。ボロボロのスニーカー姿でバットを振っていた少年が見せたうれしそうな顔は今でも忘れない。不自由なく野球ができる喜びを感じたからこそ、今年の浅尾がある。

 この日の勝利でホールドポイントは51に伸び、07年に阪神久保田がマークしたリーグ記録の55にあと4と迫った。防御率1・56という抜群の安定感で、幾度となくチームのサヨナラ勝ちを呼んでいる浅尾。この日もお立ち台こそ岩崎達に譲ったが、浅尾の好投が生んだサヨナラ勝ちだった。【福岡吉央】

 [2010年9月2日11時14分

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