<西武12-8ロッテ>◇10日◇西武ドーム

 首位西武が中村剛也内野手(27)の今季2度目の「おかわり弾」で、2年ぶりのパ・リーグ制覇へ前進した。1点差を追う6回、中村は同点の18号ソロ本塁打を放つと、2点を勝ち越された直後の7回には、2打席連続となる逆転の19号3ランをたたき込んだ。主砲の豪快な2発を含む4本塁打でロッテに打ち勝ち、11日にも優勝へのマジックナンバー「8」か「9」が今季初めて点灯する。

 中村が3年連続で打ち上げた祝砲は、中村家とチームを明るくした。神がかっていた。まずは6回、それまで2三振していた成瀬から、左中間場外の通路まで飛ばす同点ソロ。「『ウワー』って感じでした」と喜びを爆発させると、ドラマのクライマックスは1点を追う7回2死二、三塁だった。小野からバックスクリーン左へ逆転3ラン。感情を抑えきれず、珍しくガッツポーズを連発。「(右ひじを)ケガする前から何も打ってなくて、こういう大事な試合で打てて…。つい手が上がっちゃいました。気持ちいいっす」と照れた。

 1発目の特大アーチに、スタンドで目頭を押さえている人がいた。この日が29歳の誕生日だった麻里恵夫人だ。結婚してから3年連続で誕生日に本塁打という快挙?

 を成し遂げた大黒柱に「朝のテレビの占いで『三度目の正直が…』とか言ってて、ホントに打ってくれるなんて」と目を潤ませた。その占いでラッキーカラーだった白のTシャツを着せて送り出し、自身もラッキーカラーだったシルバーのバッグを持ってきた験担ぎも実った。

 ナイターで普段なら1歳の長男は寝ている時間だが、記念日はバックネット裏で観戦するのが中村家の決まり。誕生日プレゼントとして、本塁打賞のアイスクリームをリクエストされていた中村は「去年も打ってたんで、打てて良かったっす」とホッとした様子。1試合2発の「おかわり弾」は今季2度目、本拠地では初めてだったが、夫人は「残りは1試合に2本打たないと、40本に届かないですよね」と、姉さん女房らしく、尻をたたくことも忘れなかった。

 怪力の本場、メジャースカウトも驚いた。この日は海外FA権を取得したロッテ小林宏らの視察に5、6球団のスカウトがネット裏に陣取った。メッツ大慈弥スカウトが「飛んだね。バットを振らせたらすごい」と言えば、ジャイアンツ嘉数スカウトも「(他のスカウトの間でも)話題になってますよ」とうなった。目当てではなくても、反応せずにはいられないパワーに拍手を送った。

 中村の同点弾、逆転弾で、最大4点差をはね返した勝ちっぷりは、2年前に優勝した強力打線をほうふつとさせた。渡辺監督は「打つべき人が打つと盛り上がる。チームにとって非常に大きい勝ち方」と満足げだった。2位ソフトバンクが敗れ、11日にも優勝マジックが点灯する。夫人の誕生日に大仕事をした中村が、歓喜のゴールへこれ以上ない勢いをつけた。【亀山泰宏】

 [2010年9月11日8時36分

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