<ソフトバンク5-4西武>◇20日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクが奇跡の逆転Vへ、西武戦3連勝だ。3点ビハインドも何のその。秋山幸二監督(48)の積極采配が的中し、大逆転勝利を飾った。6回に代打起用されたホセ・オーティズ内野手(33)が決勝タイムリー。天王山3連戦すべてで逆転勝利するミラクルを結実させた。優勝マジック4のままの首位西武に0・5ゲーム差と肉薄。23日にソフトバンク○、西武●で、ホークスにM2が点灯するところまで追い詰めた。

 秋山監督の決断が奇跡の扉をこじあけた。6回。1点差に迫り、なおも、2死満塁。捕手田上をベンチに下げ、代打オーティズを告げた。初球だった。オーティズが西武岡本篤の直球をジャストミート。中前への逆転2点適時打だ。背番号49は一塁ベース上で両手を人差し指を天に向けるオー様ポーズだ。

 オーティズ

 代打の準備はできていた。走者がいるときの方が自分を生かせる。集中力が増す。

 8月に右ひざ半月板損傷で約1カ月離脱しながら、チーム2位の81打点を稼ぐスラッガーが、勝負どころの大仕事に胸を張った。

 指揮官の狙いが的中した。オーティズは9月のスタメン出場が10試合。その間、37打数8安打4打点。本塁打は0で、打率2割1分6厘に低迷した。16日までの前カード(対ロッテ)千葉遠征中に、練習を見ながら秋山監督がつぶやいた。

 「オーティズが最近ホームラン打ってないんだよ。実戦感覚?

 いや、ホームラン打者はそういうのは関係ない。おかわり君(西武中村)だって、あまり(2軍戦で)出ていないのに結果を残せている」。

 オーティズは右ひざ負傷後に2軍戦出場なく、緊急昇格した。秋山監督は実戦から遠ざかったことが不振の原因とは見なかった。が、V争いには欠かせない。この西武3連戦で導き出した答えは、松中を先発出場させ、オーティズの代打起用。勝負強い打撃が売りのスラッガーに、燃える場面での打席を託した。試合後、秋山監督は「一打に対しての集中力があるからね」と、してやったりの表情だ。

 直前には秋山マジックで好機を拡大していた。この回、先頭松中が死球で出塁。次打者小久保がフルカウントになったとき、一塁走者の松中にスタートを切らせた。三振ゲッツーのリスクもあった。だが、2球ファウル後にミラクルが起きた。小久保の二ゴロ処理を焦ったのか、セカンド原が失策。「監督の判断が的中した。オーソドックスな策ではないですが、誰が打者ですか?」と大石ヘッドコーチ。小久保は今季パ・リーグで2ケタアーチを放つ打者の中では、最も三振が少なく67。冷静な分析が、流れを呼び込むワンプレーの下地となっていた。

 この3連戦すべて逆転での3連勝。西武のM4は変わらないが、0・5差と大接近。風邪をこじらせた秋山監督の体にはきつかっただろうが、達成感もあるに違いない。「あ~疲れたな。3試合ともしびれたね。厳しい展開でも、あきらめないのが出ている。あと、ホームゲームでファンの後押しも大きかった」。

 球団は悲願Vに向け、この日までの3連戦同様、23日の本拠地最終戦(対ロッテ)でもファンにスタンドを赤に染める企画を急きょ決定。そのロッテ戦で勝ち、西武が同日楽天に負ければソフトバンクにM2が点灯する。残り3試合。しっかりと奇跡のエンディングが見えてきた。【松井周治】

 [2010年9月21日14時46分

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