<阪神5-7巨人>◇28日◇甲子園

 残り5戦、すべて勝つ!巨人が阪神を下して2位に浮上し、リーグ4連覇へ望みを残した。1敗すれば優勝の可能性が消滅する中、昇格即スタメンに起用された長野久義外野手(25)が1回に適時打を放つなど、3安打1打点。阪神戦で打率4割を超える「虎キラー」ぶりを発揮した。中日有利の状況は変わらないが、逆転Vへチーム一丸で突き進む。

 絶対に負けられない。チーム全員の必死の思いを、長野は打席で感じていた。1回に1点を先制し、なお2死満塁。単打と死球でつかんだチャンスを「本当に、みんながつないでくれた」と無駄にはできなかった。阪神スタンリッジのカーブに2球続けて空振り。カウント2-1と追い込まれたが、最後は甘く入ったカーブを逃さなかった。2点目の左前打。1軍復帰即スタメンの期待に応えた。

 16日ぶりにスコアボードの先発メンバーに載った。16日のヤクルト戦後、2軍落ちを通告された。プロ入り後、初めて味わうホロ苦さ。それでも、前向きだった。翌17日、西武第2球場の2軍戦に出場。「しょうがない。“日焼け”しますよ」と残暑のデーゲームにもめげなかった。つらい経験も冗談にできるタフさがあった。約1カ月ぶりの猛打賞も記録。「順調に行きすぎても駄目だと思う。ファームで岡崎監督、コーチにいろいろ勉強させていただきました」と、ひと回り大きくなって帰ってきた。

 この日を含め残り6試合。1敗した時点で、優勝の可能性が消滅する。長野は「負けられない試合だった。なんとか勝てて良かった」と告白した。ルーキーが感じた重圧は、全員ではね返した。7回の阿部のソロを除けば、残りの9安打すべてが単打だった。広い甲子園。つないで、つないで、点を奪った。投げては先発内海の後を3投手のリレーで守り抜いた。原監督は「攻めるときも全員で、守るときも全員で。そういう姿勢がタイガースを、やや上回っていたと思う」と評価した。

 1戦の重みを誰もが理解している。だから、試合前のミーティングでは、主将の阿部があらためてゲキを飛ばすこともなかった。「さあ、行こう!」。それで十分だった。6試合ぶりのマルチ安打を放った小笠原は「悪いときも、良いときも、みんな必死に我慢してやってきたんだ」と強調。みんなの気持ちは一緒だった。残り5試合について聞かれた原監督は「説明するまでもなく、どういう試合かは選手、ファン、みんなよく分かっている。期待に応えたい」と力強かった。一戦必勝。逆転Vを信じ戦い続ける。【古川真弥】

 [2010年9月29日9時43分

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