<広島5-0阪神>◇1日◇マツダスタジアム

 19歳に何度も連敗ストッパーを求めるのは酷だったのか。大事な先発マウンドで自身5連勝を狙った秋山拓巳投手(19)が4回6安打5失点KOされた。試合後、自らV逸の責任を背負いこんだ。ペナントレースでも残り1試合の先発が予定され、クライマックスシリーズでも先発の有力候補に挙がる。この悔しさをバネにもう1度、救世主よ、頼む!

 19歳秋山、気丈な振る舞いだった。決して視線を落とさず、質問に答えていく。誰も責める人などいないのに、厳しい言葉を自分に向けた。悔しさと申し訳なさから両目が潤む。それでも涙はこぼさなかった。

 秋山

 続け球(同じ球種、コースでの2球目)をしっかり投げられなかった。(前日横浜戦の)結果を知った時はビックリしたけど、いつもと同じ気持ちでマウンドに上がりました。ただ、全部が甘かった…。

 再び、負の連鎖を止めようとした。前日9月30日横浜戦(甲子園)は2点リードの9回、守護神藤川が逆転3ランを浴びた。試合後に引退セレモニーを控えていた矢野の出場機会もなくなり、誰も想像できない形で痛すぎる1敗。自力Vは消滅し、1敗すればV逸が決まる状況だった。本人は否定したが、あまりに大きな重圧に苦しんだのか。満を持して中10日でのぞんだマウンド。制球力に定評がある男のボールが浮いた。

 初回、1番梵に先頭打者弾を浴びる。悔やまれるのは1点ビハインドの4回だ。連打で無死一、二塁とされ、6番広瀬のバントを三塁へ悪送球(記録は犠打と野選、失策)。二塁走者・栗原が2点目のホームを踏み、流れは広島に大きく傾いた。「気持ちの余裕がなく行ってしまったので、落ち着いて処理できなかった。大事な試合で良い投球ができず、試合を作れずにとても悔しい」。さらに犠飛、2点適時打を追加され、この回4失点。1軍6試合目で最短の4回5失点(自責点4)で降板し、自身の連勝は4でストップした。

 前回までの4連勝はすべて、チーム敗戦翌日の勝利。チームの窮地を4度も救ってきた。逆転Vへ、望みをつないだ立役者の1人。この1敗で救世主の輝きが色あせることは決してない。まだ宿敵巨人との2位争いがある。クライマックス・シリーズがある。秋山の“神通力”は虎の力になる。「もし、また投げさせてもらう機会があれば、今日の反省を生かして、今日の悔しさをぶつけたい」。その両目はもう、雪辱に燃えていた。【佐井陽介】

 [2010年10月2日10時34分

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