<広島2-7阪神>◇3日◇マツダスタジアム

 ダブルでおめでとう!

 阪神マット・マートン外野手(29)が広島戦の7回、今季210安打目を左前に放ち、94年イチロー(オリックス)のシーズン安打の日本記録に並んだ。自身29回目の誕生日を球史に残る大記録で飾った。試合も快勝し、巨人を抜いて2位浮上。残り3試合、イチローをどれだけ超えられるか-。助っ人がヒットを打てば打つほど、2位でのCS出場も近づいていく。

 “野球の神様”から粋なプレゼントだ。記念日に快挙達成。センター電光掲示板に『210安打』の文字が輝く。虎の黄色も広島の赤色も関係なく拍手、拍手…。マートンは一塁ベース上で右手をあげ、帽子を取った。左翼守備に就く際も大歓声で迎えられ、四方八方にペコペコ頭を下げた。

 マートン

 シーズンを通してファン、チームメートに支えられた。感謝を表したかった。でも、あそこまで祝福してくれるとはね。とにかく勝てたのが一番。2位のチャンスがあるし、これから先も勝つだけ。

 94年イチロー(オリックス)のシーズン最多安打・日本記録まで、あと1本。意識するな、という方が無理な話だ。「正直、そういう気持ちも少しあった」。初回から3打席は凡退。5点リードの7回2死、カウント1-1。広島大島の内角129キロスライダーをミートした。ライナーで左前に運び、210回目のHランプをともす。ブラゼルがすかさずゲットした記念球を大事にかばんにしまった。

 「小さいころ、誕生日は父によくボウリングに連れて行ってもらった。今年は家に帰って奥さんと食事をしようと思っているよ」

 10月3日は29歳の誕生日。脳裏をよぎるのは3年前、26歳になった夜。マートンは最高の気分でアリゾナ州スコッツデールにいた。当時はカブスに所属。翌4日にダイヤモンドバックスとのナ・リーグ地区シリーズ初戦を控えていた。「メジャーで初めてのプレーオフだったからね」。心が高ぶる中、最愛のステファニー夫人と「米国でも2、3店舗しかないような」評判のレストランで食事を楽しんだ。「高級レストランは1人70、80ドル。その店は20、30ドルだったけどね」。お金じゃない。状況が最高だった。これが最も思い出に残る誕生日だったが…。29度目の記念日は、26度目を超えただろう。あの、イチローに並んだのだから。

 「彼は偉大な選手の1人。数字を見れば分かる。ピート・ローズしか達成していないことをやったし、メジャー生涯打率も3割3分、4分だろ?

 肩もすごい」。面識はない。メジャーでの対戦もない。マリナーズがキャンプを張るアリゾナ州ピオリアでオープン戦を戦ったぐらい。ただ、野球人としてもちろん尊敬する。そんな男に並び、超えるチャンスを手にした。

 9回の5打席目は中飛。日本新の211安打はお預けとなり「スミマセ~ン」と日本語で笑わせた。試合後は広島駅で数十人のファンに囲まれ、身動きの取れない状況に。もみくちゃでサインを書き終え、家族のいる神戸に戻った。注目度は高まるばかり。5日ヤクルト戦(神宮)で新記録へ。さあ、日本中の注目がマートンに集まる。

 [2010年10月4日11時47分

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