猛虎の育成新助っ人、ロバート・ザラテ投手(23)が5日、阪神入団後初のプルペン入りで周囲の度肝を抜いた。不規則に揺れながら落ちる「魔球」を披露。ブルペン捕手がキャッチできないほどだった。しかも握りは、親指を立て4本の指でボールをわしづかみするというもの。中指の先から手首まで24センチという大きな手のひらがあればこその芸当。往年の名助っ人バッキーをほうふつとさせる武器に「大化け」の予感がプンプン漂った。

 捕手を座らせて23球目、鳴尾浜のブルペンに衝撃が走った。「あ!」「えっ !? 」。キャリア29年の大ベテラン西口ブルペン捕手が慌ててミットを右打者外角へ動かしたが、捕球できない。転がるボールを追いかけ「揺れた !

 揺れたで!」と驚きの声をあげた。「何だ?

 ナックルか ! 」。ざわめきとともに、謎の球種を詮索する声が広がった。

 捕手がキャッチできない魔球。その握りが、さらに異色だった。親指をボールに添えず、人さし指から小指まで、4本の指だけでわしづかみにして投げる。中指の先から手首までの長さが24センチ。通常男性が17~19センチのところをはるかに超えるビッグハンドが生み出すオリジナル・ボール。サムアップした握りは親指なんて邪魔だとばかり。足ほどもある手のひらだからこそ可能な特殊球だった。

 この日は捕手を立たせて12球、座らせて30球の計42球。この自称「チェンジアップ」のほかに、直球、スライダー、フォーク、ツーシームを投げたが、その大半のボールが不規則に変化した。「まっすぐもほとんどが動く。ミットの芯で捕れないんだから、打者の芯も外す。おもしろい存在になるよ」。同ブルペン捕手は大化けの予感をしっかり感じ取っていた。

 投球を見守った遠山育成コーチも満足げ。「手も大きいし、指も長い。独特(の投げ方、握り)だし、かと言って、荒れるボールというわけでもなかった」。最速153キロと魔球のポテンシャルだけでなく、安定感も合わせもった左腕に目を奪われた。揺れ動きした42球は、大きくストライクゾーンを外れることはなかった。

 異色左腕の初ブルペンは驚きの連続。それでも本人は涼しい顔で振り返った。「(右打者)内側のまっすぐはカット(ボール)系、外角はシンカー系の動きをする。しっかり捕手が構えたゾーンに投げておけば、使えるボールはあると思うよ」。直球も、チェンジアップも、独特の握りも、何もかもが「なぜ驚く?」と言わんばかり、キョトンとした表情を浮かべた。今8月、入団したBCリーグ群馬では3カ月で球速が9キロアップ。無垢な「ダイヤの原石」には無限の可能性が広がる。

 [2010年11月6日10時54分

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