南の島で、背水の奇策トレ!

 ソフトバンク松中信彦外野手(37)が「速読トレーニング」で完全復活を目指す。5日、福岡空港から自主トレ先のグアムへ出発。例年ハードに練習する同地で初めて「速読」を取り入れる。常夏の島で体だけでなく目も鍛え上げ、年齢による動体視力の衰え説を吹き飛ばす。

 常夏の南の島で松中がまさかの「猛勉強」だ。福岡空港に気合の入った表情で到着した3冠王は、かつての輝きを取り戻す秘策を用意していた。手提げバッグからおもむろに取り出したのは1冊の本。練習に行くとはいえ南国に持っていくにはあまりに不似合いな“教科書”だった。

 「みんなに、目が衰えたとか言われるから。自分ではそんなことないけど。自分で買いに行ったよ」

 大事にグアムへ持ち込むのは『スポーツのための速読ビジョントレーニング』。阪神桧山らが動体視力を鍛えるために訪れたこともある「特別視機能研究所」の内藤貴雄氏(57)の著書だった。

 本の帯には巨人時代から動体視力のトレーニングを継続している小久保の写真。米大リーグでも高齢の主力選手らが動体視力のトレーニングを取り入れている。先月末に37歳になったばかりの主砲も、変わることを決意した。

 「自分にとって分岐点。変えないといけないと思っている」

 これまでは比較的ユニークなトレーニングなどを取り入れず、スイング量で活躍の元を築いてきた。だが昨季はレギュラーに定着した99年以降最低の11本塁打。かつてならスタンドにたたき込んでいた速球を、打ち損じてしまうシーンも何度かあった。オフには同一球団史上最大の2億円減俸の屈辱を受け止めた。

 松中は不参加だったが、宮崎秋季キャンプでは若手が速読のトレーニングを行っている。自身もグアムで練習後のプールサイドや海の見える部屋の中で速読術を学び、目を鍛え上げるつもりだ。

 「今年の年賀状には、みんな『ケガをせずに』と書いてあった。そういう年齢。ケガだけはしないようにしたい」

 南国でのバカンスには目もくれず、目と体を鍛え上げ、限界説を一蹴してみせる。昨季の巻き返しに燃える今オフはすべてを前倒しし、昨年12月にすでにグアム1次自主トレで走り込みを敢行。「明日(6日)からバッティングをはじめる」。センター試験を控える受験生ばりにグアムで「猛勉強」を行う松中に、今季待っているのは「合格」の2文字だ。【倉成孝史】

 [2011年1月6日12時3分

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