<巨人10-1西武>◇19日◇東京ドーム

 やっとやっと、東京ドームで勝てた。巨人の沢村拓一投手(23)が、7回5安打無失点で3勝目を挙げた。直球に本来のスピードが出ない中、打者の手元でホップするようなイメージの直球を制球重視で投げた。走者を背負いながらも要所を締めて、本拠地東京ドームで5度目の登板で初勝利。150キロを超える速球に頼って負けが続いたドラフト1位右腕は、失敗から学んで一皮むけた。

 沢村にとっては一味違う1勝だった。球場は今季2番目に多い4万5522人の観衆で埋まった。本拠地東京ドームでの登板5度目。やっとつかんだ初勝利だった。初めてのお立ち台で、中大の先輩でもある阿部と笑った。声援はひときわ大きかった。「ものすごく幸せです」。それが素直な気持ちだった。

 直球は140キロ台中盤。決して本調子ではなかった。それでも抑えた。

 きっかけは12日のオリックス戦。8回、北川に逆転2ランを浴び5敗目を喫した。打たれたのは146キロの直球。16日の練習では「終盤のまっすぐの感じはよかったんです。ファウルも多かったし、フライアウトもあったので」と、力で押せる感覚はつかんでいたと振り返る。その日のブルペンでは50球すべて直球で調整。「まっすぐの回転を意識しました」と、指のかかり方に神経を集中させた。手の甲を下から上に動かすようなしぐさで「こういうまっすぐですよね」と、手元でホップするようなイメージを描いていた。

 この日、150キロを超えたのは1球だけ。それでもストライクゾーンに投げた直球47球のうち、フライアウト、ファウルと空振りが計34球。その70%以上は打者が振ったバットの上を通過するような軌道を描いていた。勝てない中、試行錯誤しながら練習に取り組んだ結果だった。

 負けが先行し、栃木に住む母和子さん(54)から手紙とともにお守りももらった。心配をかけ「情けなくて仕方ないです」と、ふがいなさを感じていた。それでも、父の日に東京ドーム初勝利。ウイニングボールはアルバラデホがスタンドに投げてしまったが、「ファンの方が喜んでくれるのでよかったです。父には電話1本でも入れておきます」と、両親へ勝利の2文字をプレゼントした。

 原監督も「今日はスピードとは別に、相手と戦っていたなというのがありますね。その辺が成長ではないでしょうか。相手と戦い、相手を倒す。そういう点でよかった」と、白星の付かなかった日々で得た成長に目を細めた。沢村自身、今までとは違う3勝目。浮上のきっかけをつかんだに違いない。【斎藤庸裕】