<中日9-4横浜>◇9日◇ナゴヤドーム

 今度こそ、復活だ!

 中日森野将彦内野手(32)が40打席ぶりの本塁打を含む、2安打2打点の活躍で連勝を呼んだ。2点を追う4回に追撃の5号ソロを放つと、5回には勝ち越しの決勝適時打。復調の兆しを見せては再びトンネルに入っていた3番打者にとって、5月8日以来、2カ月ぶりのマルチ打点。今季最多タイ9得点という打線爆発の立役者となった。

 久しぶりの打球音だった。竜党が、そして、だれよりも森野自身が待っていた弾道だった。2点を追う4回、森野が横浜先発・新人右腕須田の初球、真ん中付近のスライダーを振り抜いた。バックスクリーン右へ一直線に飛び込む5号ソロ。「今年一番の当たりじゃないですかね」。先制される苦しい展開の中、この追撃弾が打線に火をつけた。

 4-4で迎えた5回には無死一、三塁で打席がめぐってきた。左腕大原慎との対決。今度はボールを見極めて、1-3と有利なカウントに持ち込むと最後は真ん中にきたスライダーを右翼線へ運んだ。勝ち越しの適時二塁打で完全に流れを呼び込んだ。この後、和田、堂上剛、井端にタイムリーが出て、一挙5点を奪って勝負を決めた。

 「まだまだですよ。まだ2割かろうじて超えている打者ですから。何とも言えない。これが続かないと意味がないんで…」。

 試合後、復活について問われた森野は自嘲気味に言った。出口が見えたかと思えば、それは再びトンネルの入り口…。打てない森野の苦しみは7月になっても続いていた。趣味のゴルフでスイングに悩んだことがないという森野は、打撃の難しさをこう表現した。

 「野球も、ゴルフもトップの位置が一番大事だと思います。でも、野球はそこから振るだけでなく(ボール球なら)止まらなければいけないこともある。ここなんですよね」。

 ストライクを打ち、ボールを見逃す。スイング以前の打者としての鉄則。永遠のテーマでもある部分で悩みを抱えていた。ただ、この日の2本はともに打つべき球を打ったもの。「今度こそ…」と信じたいのは周囲だけではない。

 「あとはいい場面で打つことでしょう。打たなきゃいけない場所にいますから。監督もずっとそこで使ってくれている」。

 不振脱出のために必要なことは、と問われた森野はこう言った。3番森野が打って今季最多タイの9得点。この日のように、主砲としての責任を全うし続けた時こそ、本人の口から本当の復活宣言が聞けるはずだ。【鈴木忠平】