<中日2-1広島>◇19日◇ナゴヤドーム

 憲伸、今中に並んだ!

 中日吉見一起投手(26)が2安打1失点の今季初完投勝利で、4年連続2ケタ勝利を挙げた。序盤から抜群の制球力で圧倒した。中日の4年連続2ケタ勝利は9人目。右の大黒柱が「エース」と呼ばれた大先輩たちに肩を並べた。チームは3連勝で3位タイに浮上した。

 吉見はグッと喜びを抑えた。1点リードの9回2死。最後の打者栗原を外角への139キロシュートで詰まらせて二飛に仕留めた。こみ上げてくる充実感を味わいながら、それでも笑顔はしまい込んだ。試合時間はわずか2時間12分。要した球は111球。あっという間の完投劇だった。

 吉見

 あまり調子は良くはないと思っていた。うまく的を絞らせないように配球してもらいました。1年間やっていると悪いときもある。今日の勝ちはチームにとっても僕にとっても大きい。

 そんな言葉がうそのようだった。序盤から精密機械のように変化球を低めに集めた。4回には「逆球だった」と2死二塁からバーデンに右前適時打を許したが、失点はそれだけ。5回以降は3者凡退で切り抜けた。昨季8月19日巨人戦(ナゴヤドーム)以来となる完投勝利。そして4年連続2ケタ勝利。往年の名選手たちと肩を並べる域に入ってきた。

 吉見

 すごいことだなと思うけど、まだ先がある。これが通過点になれば良いですね。一つ一つやっていきたい。

 “エース”の称号は簡単に手に入るものではない。そう強く思っているのは、ほかでもない吉見だ。2年前。16勝した最多勝右腕はオフのイベントに引っ張りだこだった。どこに行っても「ドラゴンズのエース吉見選手です!」と紹介される。そんなとき、吉見は司会者を制して「もし、5年連続で2ケタ勝利をすることができれば、そう呼んでください」と話したことがある。

 球場から出てきた森ヘッドコーチは吉見は一流かという質問にこう答えた。「一流じゃなきゃ4年連続2ケタなんかできない」。そしてこう続けた。「今いるスタッフの“エース格”ではある。今年は手術もあったし出遅れたから、ネルソンをここまでエース格で回してきたけど、ここから変わる可能性もあるだろうな」。実績は認めつつ“真のエース”襲名は先送りした。それは、吉見本人とまったく同じ考えだった。

 低迷していたチームは投手陣の踏ん張りと勝負強さで今季8度目の3連勝。3位タイに浮上した。今日20日には7度失敗している4連勝に挑む。球団初の連覇へ。2ケタ常連の背番号19が命運を握っている。【桝井聡】