<楽天2-1西武>◇30日◇秋田

 職人が秋田のファンを歓喜させた。楽天高須洋介内野手(35)が1回1死三塁で左前に先制適時打。ロースコアの投手戦において流れを引き寄せる貴重な一打となった。右肘痛のため離れていた守備にもこの日から復帰し、無失策で無難にプレー。チームに欠かせない男が健在ぶりを示し、勝利を呼び込む働きで楽天を再び勢いづけた。

 快音が大きな歓声を呼んだ。高須がバットを振り抜くと、痛烈な打球音がスタジアムに響いた。1回1死三塁から三遊間を破る先制打に、秋田こまちスタジアムのスタンドがいっせいに沸き立つ。石井一の初球、内角へのストレートにも振り負けなかった。「来たボールを一生懸命振りました!」。ここぞという時に力を込めて獲物を仕留める、無類の勝負強さは変わらない。その仕事人ぶりに秋田のファンはしびれた。

 好投の石井一から奪った大きな1点だった。3回にも内村の内野ゴロで2点目を加え、岩隈のピッチングがペースを上げていく。岩隈は5回から7回までを無安打に抑えるリズムの良さで、流れを引き寄せた。そこには高須が稼ぎ出した序盤の援護点が効いていた。

 高須は右肘痛で離れていた守備にもこの日から復帰し、無失策で切り抜けた。三塁へのゴロは処理する機会がなく「飛んでこなくてよかった」と苦笑い。「『ショートゴロの次はサードゴロが行きますよ』って岩隈に言われてたよ」と、ベンチ内の明るいムードも披露した。「この前チャンスで打てなかったから『お前のせいだ』とみんなに言われて発奮しました」とも笑った。欠かせない男が長い時間グラウンドに立つことは、数字以上の効果をチームにもたらしていた。

 28日に連勝が7で止まったが、すぐに勝利し避けたかった連敗を免れた。借金は4まで減り、8月の勝率5割以上も確定した。秋田のチーム宿舎では大勢のファンが球場への出発を見送り、岩隈は「すごくパワーになっています」と秋田のファンの声援に感謝した。投げては岩隈、打っては高須。球団を創設時から支える投打の柱が秋田の声援に応え、らしい働きでチームを勢いづけた。【大塚仁】