<ソフトバンク4-3日本ハム>◇18日◇福岡ヤフードーム

 日本ハムが2年ぶりのペナント制覇へ、絶望的な状況に追い込まれた。ソフトバンクに競り負け、勝負の首位攻防3連戦で1勝もできずに2敗1分け。ライバルの優勝マジックは15となり、ゲーム差は今季最大7・5へ広がった。中田が4回に同点適時打を放ち、右足小指骨折でも強行出場する糸井、陽岱鋼が追撃のソロそろい踏み。若手が奮闘したが、ベテラン、外国人選手が機能せず、1点が遠かった。9月に入って5勝10敗1分けと失速し、正念場が訪れた。

 福岡のソフトバンクファンは狂喜乱舞した。遠く北海道で逆襲を信じ、願った日本ハムファンは失意に沈んだ。梨田昌孝監督(58)は少し背中を丸め、嘆いた。「ダルで勝てんかったからね。今日もチャンスはあったんやけど、見ての通りやから」。3連勝で勢いに乗り、5・5ゲーム差で乗り込んだ敵地3連戦で屈した。さらに2ゲーム広げられる2敗1分け。一気に背中が見えなくなった。

 個々の力量で抵抗したが、一体感で完敗した。1点を追う4回に、中田が左中間へ同点二塁打。一塁走者の小谷野が、捕手・山崎を体当たりではじき飛ばし、追いついた。若手の力、中堅の執念でもぎ取った1点。見失いつつある全員野球を取り戻す契機と思われたが、響かない。「後ろにつなごうと思った」。4番から降格後からチーム貢献に徹する中田の一打は、報われなかった。

 出場機会が減少し、気がはやるホフパワーは3三振。稲葉も四球での出塁1度だけと、精彩を欠いた。野手陣の気概も中田、小谷野で打開した局面だけ。右足小指の骨折が判明していながら奮闘する糸井が6回に中堅へソロ。その前の2三振を帳消しにしようと懸命の陽岱鋼が「打席を大切にしようと思った」と中堅へ追撃弾を架けた。それでも得点パターンの原点回帰のつながりは、戻らなかった。

 落とせない大一番でのチームを思う采配も、水の泡になった。4回2死から満塁のピンチを招き、吉川が2失点。今季限りで退任する梨田監督は「あそこで代えたら、吉川も成長しない」と財産を残そうと我慢した。次代の先発陣の軸にと期待する左腕を、打線が救えなかった。この日で、また再調整での2軍降格が決まった。スコアは接戦だが、明るい兆しを感じさせる収穫はゼロだった。

 勝負の9月に突入して、借金5と低空飛行は続く。個々の力を結集し、開幕からV候補筆頭の巨大戦力を誇るソフトバンクに対抗。下馬評を覆し、リーグを盛り上げてきた。去就騒動による空中分解を恐れ、梨田監督は15日に自ら退団を表明した。もう1度、一枚岩にするための重い決断だった。帰路のバスへと乗り込む球場通路には、玄界灘からの強風が吹き込んだ。指揮官は穏やかな表情で、どこか寂しそうにぼやいた。

 「向かい風やな、アゲンスト。逆風やね」

 このオフに別れを告げる選手たちは、梨田監督が身を引く決意を明かした真意とは逆の方向を、少し向き始めた。近年、他球団がうらやむような輝かしい軌跡を刻んできた。崖っぷちに立った今。1人1人の選手が振り返り、日本ハムの野球を実践し直す必要がある。【高山通史】