阪神がスパルタ式の育成方針に転換することが21日、分かった。これまで入団直後の若手選手は故障防止のため慎重にトレーニングを積ませてきたが、伸び悩みが目立ち、故障しても長期化するケースが多い。球団首脳は「痛いと言えば、そのままユニホームを脱いでもらえばいい」と厳しい姿勢で臨むことをほのめかした。

 スパルタの虎や!

 阪神が若手の育成プランを見直すことになった。今季は柴田や上本、森田ら若手が1軍で活躍するシーンが増えてきたが、レギュラー級の成長にはまだ遠い。2軍からの押し上げも物足りない。球団首脳はこの現状に語気を強めた。

 「何で育たないのか。痛いと言ってる選手は、そのままユニホームを脱いでもらったらいい。毎年、ドラフトで選手は入ってくるから」

 プロの世界の本質である競争社会に立ち返ることを示唆した。

 阪神では、ここ数年にわたり、若手が育っていないことに危機感を抱いている。昨年から育成部を新設し、ファームの充実に力を入れ始めた。育成のスタイルは「じっくり型」と言える。入団直後のルーキーは、故障防止のため、練習量を抑えることもある。大きなケガで野球人生を棒に振っては仕方がないが「温室栽培」になる恐れもある。現実的な問題として、若手の故障が減ったわけではない。今季は坂や大和らが故障し、長期の離脱でレギュラー奪取のチャンスを失った。

 ケガ完治後の伸び悩みも目立つ。09年ドラフト1位の右腕二神は1年目の春季キャンプで1軍レベルの実力を発揮したが、開幕前に左脇腹を痛めて離脱。今も1軍昇格を果たせていない。高卒2年目の秋山も昨年4勝目を挙げながら、8月にようやく1軍に初合流。今季はまだ未登録だ。先発ローテーションも6人目が不在だったが、鶴や蕭一傑がアピールに失敗した。

 球団首脳は「1軍で活躍しないとダメ、と思わせないと。やはりライバルが必要。高卒は5年、大卒は3年をひとつの区切りにしないといけない」と話した。

 現在のチームを見れば、金本や鳥谷ら主力になるほど痛みに強い。これでは若トラがつけいる隙はない。痛みに耐えて、豊富な練習量をこなさなければ、プロの世界では生き残っていけない。

 地獄のような猛特訓を受ける「虎の穴」から、はい上がった選手こそが虎の次代を担っていく。即戦力補強に頼りがちだった猛虎が、スパルタ式に転換し、生え抜きスターの育成に努める。

 ◆虎の穴

 阪神の2軍本拠地・鳴尾浜球場、選手寮「虎風荘」を含めた施設の愛称はタイガース・デン(Tigers

 Den=虎の穴)。「Tigers」「Garden(庭)」と「Den(洞穴)」をかけ合わせたもの。ちなみにアニメ「タイガーマスク」では悪役レスラー養成機関「虎の穴」で逆さづりや、どう猛な肉食獣との実戦など、文字通り生命の危険を伴う厳しい訓練を行っている。