中日のドラフト1位高橋周平内野手(18=東海大甲府)は福留、荒木級のウルトラアイの持ち主だった。21日、ナゴヤ球場に隣接する屋内練習場で恒例の「視機能測定」を実施。高橋周は測定全10項目のバランスが良く、中でも「深視力(しんしりょく)」と「瞬間視」で、早くも超一流選手に並ぶ数値をたたき出した。キャンプ1軍スタートも決まっている期待の超大物は、目も一級品だった。

 ドラフト1位の超大物が、バットもボールもグラブも持たずに超一流の素材であることを証明した。専門的な視力検査の「視機能測定」。注目の高橋周は、10項目すべてで平均以上の数値をマークした。担当したキクチ眼鏡専門学校の福田和夫教授は「バランスの良さは一流選手の条件。福留選手もバランスが良かった。将来的に非常に楽しみ」。まず総合バランスで「福留級」のお墨付きを得た。

 だれもが経験のある通常の1・5、0・8といった数値が出る静止視力以外に、専門的な器械を使用し、動体視力などを測定した。野球選手の命ともいえる目には、トレーニングで向上できる能力とそうでないものがある。それだけにバランスが一番大事だという。

 目を見張る数値もあった。遠近感(奥行きの認識)を測定する「深視力」と、瞬間的に物を見る能力の「瞬間視」。この日測定を受けた選手約35人中、トップ級の数値が出た。特に深視力はプラスマイナス(誤差)がわずか1ミリだけと、ほぼパーフェクト。一般人の平均値とされるプラスマイナス20ミリとは別次元だ。毎年計測に立ち会う株式会社キクチメガネ・スーパーバイザーの加藤一幸氏は「中日でもトップクラス。荒木選手と同レベルです」と「荒木級」と位置づけた。

 「深視力」は野手にとって大きな武器だ。遠近感がバッチリならイメージしたミートポイントとの誤差が少ない。つまりジャストミートできる確率は高くなり、泳いだり詰まったりする確率が減る。守備でも打球判断の1歩目に結びつく。また「瞬間視」は、インパクト寸前までボールを見極められる選球眼に直結。高い打率と出塁率が期待できる。加藤氏は「高橋君はシュアなバッティングができるはずです」と、客観的なデータから太鼓判を押した。

 当の本人は大物らしく、落ち着いたものだ。報道陣から好結果を伝えられた高橋周は「いろんな検査があって難しかったです。目は小さいころから、そんなに悪くなかったので…」と実感がわかない様子。ただ、1軍キャンプから踏み出す、プロの世界での成功へ、“視界良好”であることは間違いない。【八反誠】

 ◆視機能測定

 「中日スポーツビジョンスクリーニング」と題し、名古屋市の「キクチメガネ」と「キクチ眼鏡専門学校」が共催。04年から新人や希望選手を対象に実施して今回で9回目。素早く視覚情報をとらえて体の動きにつなげ、いいプレーができる条件が備わっているかが確認できる。測定項目は10個ある。(1)静止視力(通常の視力)(2)動体視力(動くものを見分ける視力)(3)コントラスト感度(明暗の判別)(4)眼球運動(激しい動きへの対応)(5)深視力(遠近感の正しい認識)(6)利き目(右か左か、その強さ)(7)眼位(空間のズレ、正しい認識)(8)追従眼(接近物の判別)(9)瞬間視(瞬間的な判別)(10)眼と手の協調性(体に伝えて体が動く速さ)。同様の測定は阪神やオリックス、広島、楽天、社会人トヨタ自動車なども行っている。