マサが468日ぶりに投げた!

 中日山本昌投手(46)が沖縄・北谷キャンプ第3クール初日の14日、突然、打撃投手を務めた。今キャンプ初の登板で、打者に向かって投げるのは10年11月3日のロッテとの日本シリーズ第4戦以来。昨年のこの時期に右足首を痛め、1年間を棒に振り手術も受けたが、回復ぶりをアピール。高木守道監督(70)も期待する開幕投手へ、調整は順調だ。

 気温25度。初夏を思わせるような日差しも背中を押した。午前11時過ぎ。ベテラン山本昌が突然動きだした。「(キャンプの)スケジュールを見たら、今日くらいしか投げる機会がなさそうだったので」。ブルペンで肩をつくるとメーン球場へ移動。高木監督も見守る中、打撃投手でこの日の練習予定にはなかった“スクランブル登板”を果たした。

 ランチタイムを遅らせて打席に立った新外国人ビクトル・ディアス外野手(30=メキシカンリーグ)と3年目の松井佑を相手に、独特の大きなフォームでマウンド横の平地から投げた。打者と対峙(たいじ)するのは何と468日ぶり。現役最年長のプロ29年目。だれより経験豊富な左腕も、久しぶりの感覚が心地よかったようだ。素直な喜びとともに、復活への手応えを口にした。

 山本昌

 バッターと対戦するのは1年半ぶり。平地から6~7分の力でしたけど、投げられて良かったです。そこそこ、ちゃんと投げられました。

 2人に対し、計46球。うちボール11球を除く35球で、安打性の当たりは4本だった。期待の長距離砲・松井佑は「初めて打席に立たせてもらって光栄です。高めのボールがかなり伸びていた。ボクが言うのも何なんですが、すごくいいボールでした。さすが、プロで29年もやられている方だなと思いました」。権藤投手コーチも「全然ブランクは感じない」と高評価だった。

 背水の陣で復活を期す今キャンプ。1歩1歩、着実に調整ペースを上げてきた。第2クール最終日の12日はブルペンで今キャンプ最多111球を投げた。10日の110球をたった1球超えただけ。たかが1球だったが、この1歩が大きい。復活に込めた1球への思いが、ブルペンの球数にも表れている。

 右足首の不安はもうない。「バッターを意識して投げる中でも、手術したところは気にならなかった。痛みも違和感も何もない」。今後はブルペンで投げ込み、シート打撃登板のタイミングを見極める。山本昌を開幕投手に“指名”している高木監督も「開幕に向かって着々と進んでいる。私はウソは言いません。何人かいる候補の1人です」。あらためて開幕投手起用の可能性に触れ、大ベテランにハッパをかけた。【八反誠】