ロッテのドラフト1位左腕、藤岡貴裕(22=東洋大)がクロスファイアで西武打線に「名刺」を渡した。対外試合デビュー戦となった28日の西武戦先発マウンド。その目には1本のラインが映っていた。右打者の内角膝元に食い込む球、左打者の外角に鋭く逃げる球。左投手にとってクロスファイアと言われるラインだ。「ここは僕の生命線」。この1本線をなぞるように投げ込んだ。

 2回無死。西武の安打製造機、5番栗山が打席に立つ。内角へのカーブ、スライダーでカウントを稼ぎつつ、2、4球目とボールながらも外角低めを直球で突いてきた。そして2ボール2ストライクからの勝負球。外角低めへの対角線に142キロ直球が吸い込まれた。見逃し三振の栗山は「2-2から、あそこに投げ込むのはさすが即戦力」と力量を認めた。

 クロスファイアを投げるためのイメージがある。「左打者が立っていると想定し、そこに右肩を開かないように自分の体の壁をつくってから対角線に投げる」。軌道を頭に描いたら、そこから強靱(きょうじん)な右足の踏み込みで球に力を与える。「大学時代の試合では右足スパイクの歯が毎回のように曲がって修理に出した」。踏み込みが強すぎるゆえの現象だった。

 最速145キロで4回4安打5奪三振1失点。4回先頭打者に四球を与え、併殺打を焦って投ゴロを捕り損ね、一塁へ悪投して失点したのは反省点だ。だがクロスファイアの勝負球では6打数無安打と完璧。「直球は数字は出なかったけど、感触はよかった。攻められたし、もっと厳しくいきたい」。プロで勝ち抜くための勝利の1本線を攻め続ける。【広重竜太郎】