<巨人3-6ヤクルト>◇31日◇東京ドーム

 ヤクルトは青木がいなくたって、大型補強がなくたって強いんです。3点を追う6回、「恐怖の1番」田中浩康内野手(29)が左翼席に追撃の1号2ランを放つと、同点の7回は「代打の代打」飯原誉士外野手(28)が決勝の2点適時二塁打を放った。歴史的大型補強に成功した巨人を痛快な逆転劇で破り、4年ぶりの開幕2連勝。昨季は最大10ゲーム差を逆転されて優勝を逃したが、今季こそは開幕前の低い下馬評を覆す予感十分だ。

 「恐怖の1番」の一振りが、巨人の今季初勝利を信じて疑わなかった東京ドームのムードを一変させた。3点を追う6回無死一塁、田中が巨人沢村の高めに抜けたフォークを捉えた。追撃の1号2ラン。「3点差だし、まだチャンスはあった。何とかクリーンアップにつなげたかった」と言った。

 昨年までは早大の1年先輩、ブルワーズ青木の定位置。前日の開幕戦で、プロ入り8年目で初の開幕1番として3安打を放つと、この日は空中戦で決める。対沢村は昨季打率4割、1本塁打で、シーズン唯一の本塁打を放った相手だった。「今日はフォークが多かった」と意識を置いた。7回2死満塁では粘って同点の押し出し四球を選び、「つなぎ」の仕事をこなした。

 決して俊足ではない、新タイプの1番。当初は小川監督が内海、沢村との相性を買って開幕3連戦限定トップバッターを命じた。だが2連戦で出塁率5割と、想像以上の活躍に「考えないといけない」と、当面は1番に固定する可能性が高まった。

 昨季は打率2割5分2厘に終わり、10年の3割から落ち込んだ。渡米する直前、神宮クラブハウスの荷物整理に訪れた青木からは、ロッカーに乾燥剤が置かれていた。「今年1年バットが湿りっぱなしだったからね」(青木)という、先輩の粋なゲキ。米国で自主トレを行ったオフは肉体改造に取り組み、体重は微増ながら体脂肪率は15%から10%に下げた。鶏肉中心の食生活に切り替え、筋力トレーニングでパワーを増した。

 小川監督は「本人の自覚以外ない」と、活躍を評した。青木が抜けた「1番」を2番もこなせる田中が取ることで、打順のバリエーションは広がる。そうなれば、青木が抜けた「中堅」のポジション争いも激化する。6回に野手転向3年目の雄平が、代打で「打者初安打」を放った直後、前日先制2点適時打を放った上田と交代して中堅に入った。上田は3打席凡退だった。さらに7回2死満塁から、代打の代打飯原が決勝の2点適時二塁打を放ち、直後に中堅に入った。外野陣がそれぞれ結果を出して、チーム内競争で刺激し合う。

 大型補強を続ける巨人とは違い、青木が抜けたポジションは、「育成」で勝負する。7回は巨人投手陣が4四球と乱れた隙を、しっかりと逆転につなげた。まだ2試合。されど、今年もやる予感と要素は、たっぷり詰まった連勝だった。【前田祐輔】