<DeNA3-1巨人>◇15日◇ハードオフ新潟

 巨人に勝った。DeNAが延長11回に中村紀洋内野手(38)の2ランで、今季初のサヨナラ勝ちを収めた。中畑清監督(58)が就任以来、意識し続けてきた古巣との2戦目。再三のピンチをしのぎ、10回1死満塁のサヨナラ機は逸したが、劇的な幕切れが待っていた。主催試合では7試合目で初の白星。念願の1勝をチーム一丸でつかみ取った。

 鳥肌が立った。打球が舞い上がった瞬間、勝利を確信した中畑監督は、ベンチを飛び出した。手をたたき、両手でガッツポーズ。ホームベース上でもみくちゃにされた中村に抱きつき、背中をたたいた。「ジャイアンツからサヨナラ勝ち!

 やったー!

 この勝利は最高の喜び。やればできるんだ、俺たちは!」。古巣からの初勝利をサヨナラ勝ちでつかみ、笑顔がはじけた。

 投手6人、野手14人をつぎ込んだ総力戦。中畑監督は「最後の舞台を作った頑張りが全て。全員野球の最後をノリが締めてくれた」。投手陣は強力巨人打線を1失点に抑える力投リレー。バックも無失策で支え、終盤8回1死一、二塁、9回2死二、三塁の大ピンチも乗り切った。「守りきれた喜びが大きい。それがなかったら、サヨナラはなかった。守りも攻めていた」と振り返った。

 10回1死満塁の好機を逃したが、11回には先頭森本が坂本の失策から出塁。無死二塁とし中村の1発を呼び込んだ。「(10回に)決めきれなかったけど、サヨナラに向かう舞台設定を(巨人が)いい方へいい方へしてくれた気がする」。この日の得点は全て相手の失策から奪い取り、ミスにつけ込む「せこさ」も発揮。「守りきってチャンスをものにする」という目指してきた野球で勝った。

 中畑監督は、常に巨人を「巨大戦力」と言ってきた。巨人一筋だったプロ野球人生。常に勝利を求められる環境の中に身を置いてきたからこそ、任された新球団のチーム作りに、伝統球団からの勝利が必要と感じていた。「巨人はあまりに隙のなさ過ぎるチーム。ここをつぶせば、うちの野球も成長できて、浮上するきっかけが見えてくると思う」。今では口癖の「せこいぜ野球」というフレーズ。初めて口にしたのは、古巣に初めて挑む2月25日のオープン戦前日だった。

 だからこそ、「何としても勝ちたい」と強い決意を持って臨んだ。「絶対勝つんだという執念と、絶対負けられないぞという執念がぶつかり合った。両チームともほとんどの選手を使い切って、劇的な幕切れ。野球ってすごいな」。

 新球団初勝利を飾った1日阪神戦後には、涙を見せたが、この日は一切なし。「(涙は)出ない!

 まだこれからだ!」と叫んで球場を後にした。まだやり残す本拠地・横浜スタジアムでの初勝利。この勢いで、今度は地元でファンと喜びを分かち合う。【佐竹実】