<DeNA1-3西武>◇16日◇横浜

 やっとおかわり!

 西武中村剛也内野手(28)が今季初の1試合2発で交流戦の開幕を勝利で飾った。2回に125打席ぶりの2号ソロを左翼へ運んで目覚めると、1-1の同点で迎えた8回にはバックスクリーンへ決勝の3号2ラン。チームに3連勝をもたらした。今季はなかなかホームランが出ず、苦悩していた昨季の本塁打王が、得意の交流戦でようやく息を吹き返した。

 今季初の“おかわり”にも、ベースを回る中村はニコリともしなかった。ベンチで待ち受ける片岡に頭を連打され、ようやく笑ったが、連弾の喜びはその一瞬だけだった。「チームがこういう成績なのは、僕の責任。僕がちゃんとしたバッティングをしていれば、こんな成績じゃなかった。やっぱり4番を打たせてもらっている以上、打たないと」。勝利の殊勲者のインタビューとは思えないほど、ざんげの言葉を並べた。

 ノーアーチの呪縛から解き放たれたのは、2回だった。外角の146キロ直球を、中村らしい滞空時間の長い放物線で左中間席へ運んだ。「久しぶりにいい感触だったので、ちょっと照れてます。久しぶりすぎて、思い切り走っちゃって」と言うほど、待望の瞬間だった。2発目は中堅バックスクリーンを直撃。3ボールからのフルスイングが不調脱却の証しだった。

 今季1号から30試合、125打席。長かったか、と問われ「そうでもないです」と答えたが、チームと自身の不振のはざまで揺れた。「やっぱりホームランがね。あれが出ないことには…。ホームランを打つことが、チームの士気が上がっていくことにつながると思うので」とアーチへの本音を吐露。4番の苦悩を中島も「チーム状況もあって、いろんなことを考えちゃって」と間近に感じてきた。

 復調への道に、周囲が口をそろえたのは「らしさ」の復活だった。昨季は自分のゾーンに来たボールを確実に本塁打してきたが、不振が続き、少しずつズレが発生した。8日の仙台遠征中から「自分のポイントを確認するため」と自らティーのボールを上げ、打ち返す練習を開始。自分の間合いでボールをとらえ、スイングの軌道を見つめ直した。

 復調を感じさせるデータが、四球の数にある。10日の楽天戦から3試合連続四球、計6つの四死球を選んだ。それまで自分のゾーン以外のボールを追いかけ、凡打を繰り返すシーンがあったが、自分のスイングを取り戻せたことで、打席の中で余裕が生まれた。「最近、四球が増えてきて」と笑ったが、虎視眈々(たんたん)と自分の“獲物”を待つ、猛獣スタイルがよみがえってきた。「自分が打てば、チームが変わる。借りを返せるように」。本能を呼び起こした獅子の4番が、1発で息の根を止める。【久保賢吾】