<巨人4-2オリックス>◇17日◇東京ドーム

 巨人杉内俊哉投手(31)が、リーグ単独トップの5勝目を挙げた。巨人移籍後初の交流戦登板。毎回のように走者を背負うなどリズムに乗り切れなかったが、6回5安打2失点と粘った。1点を追う6回には坂本勇人内野手(23)が、21試合ぶりの本塁打となる3号同点ソロを放ち、流れを呼び戻した。セ初の交流戦優勝へ幸先の良い連勝スタートとなった。

 セ界の杉内が勝った。ゆったりとした投球フォームの手元から白球が離れる。敵は思い切って踏み込み、バットを振り回してきた。捉えたと思った打球の行方は、フェアグラウンドではなく、ことごとくバックネットに突き刺さる。「ファウルの方向、明らかに刺されている。打者有利で9割方直球を待っている状況で、そうなるとボールがきているなと感じられる」と、杉内がニヤリと笑った。

 ハーラートップの5勝目を手にした勝ち頭の実力を証明したのは直球だった。全93球のうち、直球は38球。内訳は見逃しストライクが12球、空振りは2球、ファウルが9球、計23球でカウントを稼ぎ、オリックス打線に牙をむいた。スピードガンの表示は最速142キロ。決して特別な数字ではないが、対峙(たいじ)する打者には別次元の感覚だったに違いない。

 前には飛ばない不思議なボールをチームメートの村田は「『ビュン』ってくるんだよね。本当にすごいよ。ボールが前に飛ばないんだよ。打ち損じすらできないんだから。ダルビッシュとかマーくんもすごいけど、俊哉のは、すごいよ」と解説する。この日も6回に大引に中前打を許した1球を除き、130キロ台後半の直球で、相手打者を刺しまくった。

 今季から主戦場は通算103勝を挙げたパからセに変わった。当然ながら、投げるだけではないのがセの野球。シーズン前に「手も痛いし、得意じゃない」と、話していた打撃でも2打数2安打でプロ初のマルチ安打を記録した。「やばいでしょ!

 ちょっと、うれしかったです」と、両手に残った感触を表現した。

 投打で引っ張り、自身4連勝でチームに交流戦開幕2連勝をもたらした。原監督も「ボールの勢いは良かったと思いますね。一生懸命というか、ああいうスタイルで投げていると、こういう勝ちも付きますよね」と、グラウンドで汗を飛び散らせた左腕をたたえた。杉内も「2アウトからの死球は良くなかったけど、こういう試合で勝ちがつくのは大きい。野手のみんなに感謝ですね」と、素直に白星を喜んだ。過去の交流戦はパの独占状態が続くが、今季は「セ界の杉内」が頂点をいただく。【為田聡史】

 ▼杉内がハーラートップの5勝目。交流戦はソフトバンク時代の10年6月13日巨人戦から5連勝で、通算では歴代3位の19勝(7敗)となった。この日は打撃で2安打。杉内の打撃成績は通算67打数8安打となり、1試合2安打はプロ入り初めてだ。現在、杉内は5勝、勝率8割3分3厘、58奪三振がリーグ1位。この3部門はソフトバンク時代に勝利が05年、勝率が09、10年、奪三振が08、09年に1位。両リーグで勝率1位は工藤(西武と巨人)がいるが、両リーグで最多勝、奪三振王の投手は過去にいない。